竜に接近せよ!
雨が降る前に、長の家に赤みがかったギザギザの葉と木苺に似た黒い実が三種類届けられた。
それをカリアとアウソが順番に見ていく。
カリアは昔、身内が魔力病で苦しんでいる時によく見た物だったからなのと、アウソは薬草学を習得しているから。なんでも出来るなコイツ。
オレも勉強の為と一緒に見る。
キリコは何か考えているようで、壁に凭れたまま目を瞑っている。
「あった!」
二人が右端の葉を持ち上げた。それが紅破の葉なのか。
「どのくらい、その葉を取る、良いですか?」
ラシュが言う。実はこの葉を持ってきたのはラシュだった。これは鳥が食べる実として認識していたので、誰もこの葉の存在を知らなかったのだそうだ。
「このくらいの入れ物に少し溢れるくらい欲しい」
カリアが手を動かして説明する。
一般的な盥程だ。
「わかりました!!ギョ ギョビャ シュツォ ニャ ジョキェ ビャニォ ノーミョ!!!」
「オオー!!」
そして男達は森の中に消えていった。
早朝。
霧の深い時に出発した。
スワとバラクが先導し、その後をついていく。バラクや蜥蜴系の獣人は視界の悪い霧の中でも問題なく歩いて行けるらしい。
今回は霧や雨の水に塗れて服が重くなることを想定して、出来るだけ動きやすい身軽な格好にしてきた。それにしてもカリアの格好は正直どうかと思う。ビキニの上みたいに胸しか隠れていない上着に、下が七分丈のズボン。
思わず「そんな装備で大丈夫か?」と突っ込みを入れるところだった。
しかし、カリア曰く「正直服は邪魔」との事。
そんな師匠の弟子であるキリコもだいぶ露出が高く、アウソもどこかのジムにトレーニングに行きそうな格好だ。もちろんオレもランニングに行きそうな格好ではありますがね。
そんなオレですが、今回は万が一に備えてネコと魔力をリンクさせています。はい、いつぞやの超回復能力解放するつもりです。
もちろん当たる気はないけど、オレはこのパーティではまだ低戦力なのは自覚しているので、持っている力は最大限に活用します。
そして、遂に昨日来た場所までやって来た。
「あれ?寝てる?」
アウソが意外という風に言う。
それをキリコがニヤリと笑いながら返した。
「寝てるわね、運が良い」
竜は昨日の所から少し離れた所で丸くなっていた。動く様子はない。
「儲けだ」
ネコを地面に下ろす。ネコにはここで待っていてもらおう。
「じゃあ行ってくる」
『気を付けてー』
獣人達にはいつでも消火活動出来るようにあちこちに待機してもらい、オレ達はそろりそろりと竜に接近する。苔が雨に濡れてもヌルヌル滑るやつではなくて良かった。この苔は滑るどころか網目状になって水を全て下に落としてくれているからぬかるみもなく、これなら全力で踏み込める。
そのまま竜の元に辿り着き、とても穏やかに交渉までできればパーフェクト。
「!! 止まれ」
しかし現実はそう甘くはないのだ。