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吃驚人間か!?

 今日の夜空は薄雲が掛かっている。


 海の遥か遠くにある雲が綿のように盛り上がり、中が時折青白く光っている。雷か。


「明日は雨が降るかもしれんな」


雨の臭い(アミンカジャー)でもしますか?」


「ああ、酷い雷雨になるかもしれん。まぁ、それは置いといてだな」


 岩の上に座るオレの目の前にザラキが立つ。

 そしてじっとオレを観察し始めた。


「何してるんですか?」


「ちょっと、試しに来いって言ってみろ」


「え?なんで?」


「いいから」


「………来い」


 言ってみたが、何だろう。特になにも起こらない。


「じゃあ次は風を呼ぶ感じで言ってみろ。あ、そよ風くらいな。さっきの龍を思い出すなよ」


 一体なんだ?

 はてなをくっ付けながらザラキに言われたように想像する。そよ風。どうせなら気持ちのよい風をイメージしよう。


 そうだな、サグラマ近くの森で感じた風がとても気持ち良かったな。あれにしよう。


来い(ハーリヒュー)…、!!?」


 なんだ今の言葉は!?

 オレは普通に来いって言ったはずなのに。


「来た」


 ザラキが空を見上げると、とても心地よい風が吹いてきた。さらさらと草を揺らし、優しく頬を撫でる。


 風が来た。


「え?え?どういう事ですか?これ」


「じゃあ次はその風を見てみろ。今度は魔力を見る感じでな」


(意味わからん、けど…)


 ザラキに言われた通り見てみる。

 すると暗い中で風の粒子が淡い光を放ちながら風に合わせて流れている。


「何が見える?」


「風の粒子です」


「じゃあ、そこからゆっくりと目の力を抜いてみろ。抜きすぎるなよ、適度にな。感覚的には見るよりも眺めるという感じだ」


 眺める。


 凄く難しいと思いながら少しづつ目の力を抜いていく。ピンぼけする感じだ。額から汗が吹き出す感覚がするが、拭く余裕はない。


 そしてピント合わせのように調整を重ねると、透明な細い帯のような物が現れた。それは水の流れのように緩やかに動いている。


「何か見えたか?」


「透明な帯が見えます。なにこれ」


「やっぱりな。消していいぞ」


 目を瞑り眉間を揉む。凄く目が疲れた。


「お前、見えすぎるんだ。あと、まぁ、これは大変珍しい事なんだがな」


 一旦言葉を切り、言おうかどうしようか迷っているかのような間が開いて、再び口を開いた。


「半分魔族化してるくせに精霊と縁を結んでる」


「ザラキさん何言っているのか全然わかりません」


 意味もわかりません。


「俺だって意味わかんねーよ!!初めてだよこんなの!!吃驚びっくりだわ!!」


 キレられた。


「だいたいネコが悪魔なのも吃驚だし反転の呪いも吃驚だし、更にこれ以上吃驚させてどうするってんだ。吃驚人間か!」


「ザラキさん吃驚がゲシュタルト崩壊してます」


『ザラキがあらぶってる、めずらしい』


 岩の横でゴロゴロしていたネコが言う。

 お前は我関せず過ぎだろ。


 ちなみにネコはすでにボヤけが消えつつあった。とても優秀な猫である。


「とにかく、今までの呼吸以外の心を静める修行を一旦忘れろ。お前には合わんやつだった!」


「ええー!!」


 今までの努力の時間が無駄だったっていうことですか。


「これから改めて、お前に合った方法を探す!!全力で協力しろよ!!返事!!」


「はい!!!」


 こうして、修行をやり直す事になったのだった。

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