098 国
そろそろ100話ですね!
100話は記念の紋章でも作ろうかなって思ってます。
「国について教えてほしい?」
「ああ、さっき聞いたオウラン帝国の意味もよくわかっていなかったし、これからも旅をしていくにつれて必要だと思った」
バンダナを買って、俺とエスペランサは先輩たちと合流し、どうもヴァーユ先輩の知り合いの宿らしい場所に泊まることとなった。
女将は、脱色したような白髪の似合う美人。
亭主は、体格のいい金髪のマッチョ。
知り合い優遇か、俺の種族も関係したかわからないが、普通の部屋と同じ値段で1ランク上の場所に泊まれることになった。
バンダナはもう装着していたから、紋章のおかげとは思えないけれど。
それにしても、この宿は結構……。
日本的というかなんというか、外国人ががんばって和風にしてみた、みたいな雰囲気だな。
「ええと、前世の記憶とリンクさせて、せつめいしたほうがいいですよね、もちろん」
それで頼む、と俺が頭を下げるとエスペランサはふふふと笑って見せる。
その顔、実にそそられていい。
「そうですね、まず『オウラン帝国』から行きましょうか」
オウラン帝国。
それは、腕獣族と械刃族がほとんどの国らしい。
帝国、と銘打ってはいるが帝政ではなく立憲君主制。
つまり、憲法が王の上にいるということだ。
建前上では。
「この世界では、一番の領地を有する場所ですね」
「ほぅほぅ」
「シルバさんのもといた世界でいえば、ロシアとインドを合わせたくらいの面積はあります」
思った以上に広かった。
そもそも、この世界というか、この惑星がどのくらいの大きさなのかわからないから、俺は何とも言えないのだけれども。
「思えば俺、械刃族知らない」
「そうでしたね。腕獣族が獣人だとするならば、械刃族は一言でいえば、サイボーグです」
ほぉ。
なかなか、一つの国とするにはミスマッチなかんじもするけれど中々面白いな。
で、腕獣族は基本的に和風。
「あのとき、説明しましたっけ。……クレアシモニー学園にいた、ギリス・ランレイは械刃族ですよ」
そんな人いたっけ。
……ああ、ランと戦っていた人か。
「あまりにも印象が薄すぎて覚えてなかった」
「そうですか……」
ランに負けていたくらいだし、そんなに強くないという感じはしていたな。
本当に、俺は俺と関係ないことは何も知らない感じなんだよな。
この世界の事は、これから生きていくうえで欠かせない知識になりえるから頑張って覚えようとはするけど。
いちいち、他人の事なんて気にしていられないっていうか。
面倒事を抱え込むのは問題ないが、できれば俺の意思で巻き込まれたい。
たとえば、今回の出頭みたいに。
今回に至っては、俺がランを倒して双子のレイカー姉妹を救った結果だから、俺は何も思わないけれど。
「むぅ。……で、何か質問は?」
「今のところはないかな」
「はーい。次はここ、『カエシウス聖王国』ですね。ここは説明いらないでしょう」
ここはいらないな。確かに。
と、俺は部屋の中だということにやっと自覚を持って、エスペランサに選んでもらったバンダナを外した。
「次は、『セリシト魔法王国』。知勉族と翼羽族の住む自然豊かな国です。ラン・ロキアスさんのそばにいたリンナアイデル・パン・リーフさんはそこの王族ですね」
王族にしては、なんだか微妙な立ち位置だったような気がするけれど。
だって、転生者っていうは俺と同じならば学園に入るまでは放浪していたはずだ。
「君主制というか、王様という概念がない国ですね」
「?」
「魔法王国を統治しているのは、賢者なのです。魔法を極め、すでに百何十年と生きながらえている魔法の学者様」
賢者の統治する、国か。
いきなり幻想的な話になってきたぞ……。
魔法に優れた世界、というのをそんなに感じられないんだよな、ここもそうだが。
どうしても、科学というか近代的なイメージに、中世さを残した感じが『カエシウス聖王国』にはある、気がする。
「翼羽族は初めてですね。簡単に言えば、背中に翼が生えただけです」
「ずいぶんとそのままだな」
「だって、本当にそのままなんですよ? ある意味では、一番人間という種族に近いのではないでしょうか。翼という武器を持って三次元的攻撃ができる以外は、すべて平均的ですし」
それにしても散々ないいようだなぁもう。
この世界に種族神なんてものが存在していたら、フルボッコじゃなかろうか。
「このくらいで説明は終えたいと思いますが、どうですか?」
「何を?」
「疲れているようですし、ひざまくら、しましょうか?」
……この子は天使か。
間違えた、女神だった。