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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第6章:試練の旅【Travel of trials】
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093 信託待ち

「あ、もどってきた。大丈夫? なんともない?」


 グロウ・レイリュさんに連れられて、元の場所にもどるとまず近づいてきたのは安堵した顔を浮かべているアイライーリス先輩だった。


 どうも、俺が龍眼族レザールだからなにか問題でも起こってしまったのか、結構心配だったらしい。

 少々過保護な気もするが、優しい先輩はいいね。


「いや、なんでもない。大丈夫だ」

「そう? ……よかったぁ」


 過保護って結局いいんだろうか。

 かわいいけども。


 エスペランサのほうをみると、相変わらずのニコニコ顔でこちらを見つめていた。

 そしてその笑顔で俺は自分がどんな神託オラクルを貰うのかを察する。


 まあ、引き受けてやるのもいいだろう。

 なんだか、上から目線のいいようになってしまったが、 本当に俺はエスペランサと出会えて、こうやって世界で暮らすことができて幸せなんだから、大丈夫だ。


「はい、こちらです。ついてきてくださいね」


 グロウ・レイリュさんは手を上げると、神殿の中央部に入っていく。

 それを見届けて、まず入っていったのは希望神信者っぽいアイライーリス先輩と、仲良しのヴァーユウリンス先輩。


 そして、俺とエスペランサが少しの間遅れる。


「シルバさん、覚悟はいいですか?」

「怖い言い方をするなよ。……俺の魂を拾ってくれたエスペランサがここに居るから、俺はもう一度生を受けることができたんだ」


 だから、覚悟なんて必要はないのだ。

 俺が前世で叶えることのできなかった願いを、この世界で手に入れる。

 そのためなら、俺はなんだってしてやるさ。









 神殿中央部には、太陽の光が直接入り込む明るい場所があった。

 ガラスのある様子はないが、雪が降っていても神殿内部は心地よい温度になっているあたり、結界か何かがあると考えたほうがいいんだろうか。


 そして、その光の差し込む真下には白い女神像。

 虚空を抱きしめるように目を閉じた、彫像でもわかる神秘的な美しさを誇る長髪の女神は、エスペランサの真の姿だろうか。


「これは、2000年前の文献と一緒に遺されている造形を忠実に再現したものですね」


 グロウ・レイリュさんが俺たちに説明してくれる。


「毎回、文献に登場する女神様の姿は違います。手乗り人形ほどの大きさであるのが一番有名ですが、このように長身の女性の時もあります」


 ほう。

 で、今回は幼女ロリの姿という訳か。

 なるほどな。


 エスペランサの方をむくと、すべてを悟ったような笑顔をしている。

 しかし、前みたいな悲しそうな笑顔じゃないから、まだ見ていられるのだ。


 それにしても、こうみるとエスペランサもわずかながら神々しさが伺えるんだよなぁ。

 なんだかんだいって、神聖な場所に行くと神聖なものはさらに神聖になるっていうか、もう何を言いたいのか 訳が分からなくなってきているけれど。


「神託は、誰からお受けになられますか?」


 とグロウ・レイリュさんは俺たちに訊く。

 どうなんだろう、俺は長くなる、と思って最後にしてもらったけど。


 やっぱり最初はアイライーリス先輩か。


「直接、他の方の神託を聞くことは禁止されております」


 そう言われて、俺たちは別室へ。

 いったいどんな話がされるんだ?

 神との対談というものが俺には全く想像できない。


 エスペランサは、意識を神殿中央に向けているのか全く喋らない。

 想像以上に喋らない。


「シルバ」

「どうした?」

「いや、……なんでもないぞ」


 先輩はそういったんだが、正直そんな風には感じられない。

 何か確実にありそうな気がするが。どうなんだろう。 いったい何が起こったと言うのだ。


「いや、私は大丈夫だ」

「遠慮しなくてもいいのに」


 おれはそういったが。聞き入れてはくれなかった。

 エスペランサの情緒不安定の次は、先輩の情緒不安定だろうか。


「そういえば、エスペランサはもう、悲しそうな顔をしなくなったよな」

「そうですね、シルバさんとこれからも一緒に居られるということが分かったので」


 今、エスペランサはなんとも無さげに言ったが。

言われた本人である俺からすると、滅茶苦茶今気恥ずかしい。


 真顔でそんなことを言いかましてくるとは、中々だな。

 どうなってるんだ、いったい。

 本当にどうなっているのか。


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