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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第6章:試練の旅【Travel of trials】
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089 再び、レジリナ

 ともかく、俺たちは何とか『カエシウス聖王国』最南端の町、『レジリナ』に到達した。

 時刻は夕暮れに差し掛かったあたりで、空は少々赤い。


 とりあえず、俺は先輩の二人に食料の調達を任せ、エスペランサと一緒に宿屋を探すことに。


「なんだか、久しぶりなのですが」

「うん、久しぶりだな。……俺も懐かしい感じがする」


 二人がいないことを確認して、エスペランサは俺の手を取る。

 その顔は、どこか切なげでどこか悲しげで。 同時に、どこか嬉しそう。


「本当は、もうお別れでしたから。本当にうれしいのです。……『人』として、この世界にいれるのが」


 希望の名前を冠した神は、そういって俺の前で目を細める。

 これは永遠じゃない、それは分かっているのだが。

 ……この時を、大事にしよう。


「さて、宿屋に向かうとしますか」

「そうですね、そうしましょう」


 俺は、彼女の手を強く握りしめて、歩き出す。







「んっしょ、んっしょ」

「どうだ部屋は取れたのか?」


 少し待っていると、先輩たちが戻ってきた。

 簡単な防寒具も買ってきたらしく、アイライーリス先輩は少々重そうだったが。


「ごめんね、さすがに重くて二人分しか買えなかった……」

「あとで買いに行く」


 俺は龍眼族レザールだからなんとかなるけど、エスペランサの分は買っておいたほうがいいか。

 俺は頷き、ヴァーユ先輩に宿屋のカギを渡す。


「んぅ?」

「ヴァーユ先輩とアイライーリス先輩で一室。俺とエスペランサで一室」

「えっ」


 その「えっ」はいったい何をしめしているんだろうか。

 俺がエスペランサと寝ることに対しての驚愕なのか、「私が一緒に寝たい」のほうなのか。


 しかし、俺が言い返す前にエスペランサが言ってくれた。


「シルバさんとは、クレアシモニー学園に入学する前から旅仲間なので大丈夫ですよ」

「いや、そういう意味じゃ……」


 先輩はかなり不満げな表情をしていたが、エスペランサが話はこれで終わりというように会話を打ち切る。

 そして、俺を見て満面の笑みを浮かべながら抱き付き。

 先輩二人の顔は、またもや般若のような形相になる。


 この世界に宗教などというものがあるのかは不明だが。

 エスペランサの正体がわかっていたなら、俺は希望神ホープを支持する宗教に今殺されてもおかしくないだろう。


「まあ、とにかく今日はゆっくり休んだほうがいい。……明日から激務になるだろうし……」


 明日からは野宿の可能性も高くなる。

 心やすまないときもあるだろうし、目的地のレイカー領はかなり北の方に位置する。


 日本で言うなら、雪に覆われた日本の九州から北海道まで徒歩で向かうようなものだ。

 実際、この国は日本よりも何十倍も大きいのだが。


「というわけで、今日は解散。ゆっくりおやすみなさい」

「……うぅ」


 ヴァーユ先輩はまだ不満そうな顔をしていたが。

 とりあえず、無視した。




「明日の目的地はどこらへんなんだ?」

「そうですね、えっとこの地図を見ていただけますか?」


 エスペランサが取り出したのは、地図なのだが。

 ……どうなっているんだこれ、と俺が戸惑うくらいには高性能だった。

 よく、SF映画などで巨大なモニターに映される、レーダー機能の付属した機械があるだろう。 

 あれとよく似た感じの、おそらくまだこの世界でも創り出せないであろう地図。


「今、御存じのとおり私たちがいる場所はここです」


 細く、雪のように白い手で指差す場所は、今俺たちのいる『レジリナ』だ。

 そして、とちょっと北の方に指を動かすエスペランサ。


「こちらが、明日中についたほうがいいと思われる場所です」

「1日で行けるのか、怪しいんだが大丈夫か?」


 公道が伸びているので大丈夫です、とエスペランサは言ってのける。

 ほぅ。森の中を潜り抜けたりはしないということか。

 なら大丈夫だな。


「そろそろ寝ましょう。……明日は早朝から出発ですね」

「そうだな」


 俺はエスペランサの手を引いて、ベッドに寝転がる。

 そして、彼女が抵抗なく俺を受け入れたことに気分をよくして……。





 次の行動に移す前に、エスペランサも俺も、睡魔に負けた。

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