084 閑話 準備 V(ailulince)&A(yrayiris)
「旅に出るなんて、こういうのは初めてだねー」
「そうだな、レイカー家か……」
クレアシモニー学園のとある寮で。
ヴァーユウリンス・ヴァン・フロガフェザリアスと、アイライーリス・ホムラ・アマテノヴァルは着々と準備を進めていた。
勿論、シルバに誘われたからである。
半ば、自分たちが強引に言った感じもあったが、結局許可してもらったのだ。
「結局、私魔剣創ってもらってないぞ、アイラだけずるい」
「ええっ?! こんなに時間かかって、まだ作ってもらってないの!?」
アイラが、本当は創ってもらう気なんてないんじゃない? と不安げな顔でヴァーユにささやく。
「私だって、誰かを護れるような力がほしい」
ぶぅ、と少々膨れた様子のヴァーユに、アイライーリスはなだめるように頭をなでた。
「でも、シルバ君のことだから『ヴァーユ先輩のことは俺が護る』って言って戦いに参加させたくないんじゃないかな」
「……それだったら、うれしいんだが……」
と、若干ふてくされながらも、その顔は赤い。
少しどころではなく、もうすでに真っ赤である。
「少しくらい、なら、でも……」
「やっぱり、自己防衛手段はほしいよね」
「そうだな……」
まあ、彼女が魔剣を欲しがる理由は、半分くらいがアイライーリスへの嫉妬でもあったり。
すくなくとも、彼女は自分だけ助かろうとは思わない、
戦うのなら、私も戦う。そういう思考回路が組まれているのが、ヴァーユウリンス・ヴァン・フロガフェザリアスという人なのである。
「とにかく。私は明日シルバに頼んでみるよ」
うん、それのほうがいいかもね、一番」
アイライーリスは、そういってもう一度ヴァーユの頭をなでつけると自分の準備に戻る。
ヴァーユは、少し考え事に耽っていたが考えを頭の隅に押しやって、自分の準備を最優先とした。
「……ねえ」
「なんだ?」
「ヴァーちゃんって、シルバ君のこと好きなの?」
「そういうアイラはどうなんだ?」
質問を質問で返され、アイライーリスは少しだけ詰まってしまう。
シルバが自分の気持ちに気づいていないように、アイライーリスも自分の思いがどういう意味でシルバのことが好きなのか、考えあぐねていたのだから。
反してヴァーユは、すでに自分の気持ちを明確にしていたらしい。
自分のことが好きな人が誰か、すでに明確になっているため気持ちは幾分とすっきりとしているのだ。
「私は、シルバのことが好きだぞ」
「……うぅ、なんでそんなにはっきりと言えるのさぁ……」
さぁ、何故なんだろうなとヴァーユは笑った。
その顔には、すでに迷いは、ない。