081 また、旅立ちへ
「……ほう。ということは、明日から学校を休学する、ということなのか?」
エスペランサの正体が分かって、再度一緒に旅をすることが決まって1日がたって。
俺は、彼女をつれて一緒に今、二人の先輩と同じテーブルに座っている。
「そうなるな」
「で、この子は一緒に行くのが決定していると」
「ああ」
この子とシルバの関係性は何なんだ? とヴァーユ先輩。
まあ、そうなりますよねー。とかどうでもいいことをおもいつつ、俺は「家族だ」と答える。
神様を家族呼ばわり。
真実を知っている人ならおそらく卒倒ものだろうが、気にしない。
そもそも、その言葉にエスペランサが顔をにっこりさせているのだからこれでいいのだ。
「かかか、家族ぅ!?」
変に反応したのはヴァーユ先輩ではなく、相方のアイライーリス先輩の方だった。
一応、妹という意味で言ったんだが、何か勘違いをなされているようだ。
そっとしておこう。
「……なんか気にくわない。私も行く」
「は?」
「あ、じゃあ私もぉ!」
思ったよりも早く話が決まってしまったけど、どうすればいいんだろう?
「シルバとなら大丈夫だろう」
「そうだね、シルバくんと一緒なら大丈夫」
「いや、交通手段は禁止されているってことを言いたかったんだが」
かまわない、と二人に言われて俺は大丈夫だと思ってしまった。
本当に大丈夫? 多分1ヶ月くらいは歩きっぱなしになるんだが。
「それにしてもレイカー家への出頭か。……凄いんだな」
「レイカー家は行ったこと……」
「あったら私は今頃こんな口調になっていないはずだ」
えっ。
その口調と、会った会ってないってかんけいあるのか?
俺はそのあとに訊こうとしたが、ヴァーユ先輩が話を切り上げてしまったため、それもかなわない。
「結局、二人とも来るってことでいいんだな?」
「そうだな。……ということは、今日急いで準備をしないとってことか」
荷物は少な目で頼む。と俺は二人に伝え、解散を宣言した。
「俺たちも準備しないとな」
「そうですね。……あの、シルバさん」
エスペランサが、俺の服の裾をそっと摘む。
うるうると潤んでいるその目は、どうみても、あれだよな?
「手、繋ごうか?」
「はいっ」
白い手が俺の手にそっとふれ、すぐに引っ込める。
おい、引っ込めるな。
俺はそんなことを思いながら、手を伸ばして彼女の手を握る。
はぅ、とエスペランサは顔を赤らめ、ふるふると体をふるわせる。
「……なんか、私が神様だって聞いてから遠慮がなくなって気がします」
「えっ。そんなこと無いぞ? ないない」
実はあったりする。
神様が俺に好意を寄せてくれているのなら、いくらかやっても許容されるだろうなとは思ってる。
大丈夫、愛情故だ。
神に愛情? ……いいか。
「私達はどうしましょう?」
「結局、途中でも泊まったりすんだろうし、最低限の準備でいいんじゃないか? ……ちょうど、俺と今のエスペランサが旅立った時みたいに」
それもそうですね、とエスペランサは笑う。
って、獣耳なくなってますけど?
俺がその場所を指摘したら、大丈夫ですと返された。
あ、周りの人全員の記憶を操作したんだな。
権能すでに使ってらっしゃった。
「シルバさんには、記憶操作はかけていないので。はい」
「おお。ありがとな」
「代わりに、シルバさんが私を好きで好きで仕方がないってかんじに記憶操作しようかと思ったのですが、やめました」
今さらっととんでも無いこといい出したぞ、大丈夫かこの神様。
本当に大丈夫? 俺の記憶なにか操作されていないか!?
言われると心配になってくる不思議。まあいいか。
「……エスペランサ、こんな感じで良かったのか?」
「本当はお嫁さんとかが良かったのですけど、妹ならそれでかまいません!」
ちょっと大胆な義妹で! とか言ってるあたり熟知しているのかっ!
この子、さすが神である。何でも知ってる!
これからまた旅が始まるんだし、またエスペランサと旅にでる機会なんていくらでもある。
大丈夫。俺たちの未来はつながってる。
これでこの章は終了し、番外編を数話挟んだ後次の章へ行きます!