079 命令
「……はぁ」
俺は、地べたに這い蹲り少しも動く気配を見せない男子生徒十数名を見下ろしながら、ため息をついた。
さすがに卑怯だったのかもしれない。俺の戦い方は。
【引斥制御】で下に引力を強化し、動きを鈍らせて龍眼族の膂力で蹴ったり殴ったりするだけ。
龍眼族の膂力は、何回も説明するが全種族最強であり。
骨が数本折れた可能性も否めない、というのが俺の見解である。
いや、もしかしてバッキボキに折れているかもしれない。
誘拐した土産だ。
「え……と、終わったのかな?」
「ああ、終わったよ」
リンセルさんが戻ってきたようだ。
アンセルさんは、途中で意識を失ってしまったらしく、カレル・アテラット先生に医務室へ運んでもらっているらしい。
「なんで、助けに来てくれたの?」
「さぁな」
俺は首を振って多くは語らず、リンセルさんを抱き上げて。
リンセルさんが真っ赤になるのもかまわず、医務室へつれていくことにした。
「ねえ、歩けるってば」
「……何かあったら困る」
「それは、私がレイカー家の娘だから?」
彼女の言葉に、俺は一瞬どういう意味か分からなかった。
そして一瞬あとに、ヴァーユウリンス先輩がいっていたことを思い出す。
「違うな。これは俺の個人的な感情だ。……リンセルさんがたとえ孤児だとしても、王族の娘だとしても同様に救出に向かっていたさ」
「へぇ」
ちょっと、疲れたかもというリンセルさんに、俺は寝てていいと言った。
まもなく、安らかな寝息を立て始める彼女。
そのすがたは、天使のように愛らしい。
確かに、男が狙うのも考え物だな。
「シルバ、よくやった。……ただ、問題がある」
「はい」
ここは医務室、の近くにある小部屋だ。
生徒指導室、とは少し違うようだが対面でちょうど、生徒と教師が一対一になるような構成になっている。
「まず、誘拐した人の被害状況だが、死人が出た。しかし今回の件はレイカー家当主がかなり感謝しており、お咎め無し」
死人出てるけどいいのか。とか考えていたが、この世界はもっと厳しいものだって知ってた。
そうだった。ということは、双子姉妹を誘拐してランをおびき寄せようとしてきた人も、ある程度は死を覚悟していた?
いや、違う。
彼らはランが、つまり知勉族と醒眼族のハーフがくると思っていた。
しかし、それよりも遙かに強い龍眼族がきたのだ。
おそらく、ランに対してなら勝算があったのだろう。
「レイカー家に出頭命令が来ている」
「出頭? ……はい」
「それと、なぜか分からないんだが、ランが満身創痍の状態で現場の近くにいた」
俺がやりました。
訳の分からないことで因縁を付けられたのでぼっこぼこにしちゃいました。
……と、そんな事も通用するはずがなく。
「あいつ自身はなにも言わないし。俺はなにも知らないが。……結局、なにをしていたか位は推測できる」
「そうですか」
「まあ、コレは教師の管轄じゃない。……自分たちで解決させるんだ、いいな」
そういうと、アテラット先生は話は終わり、と立ち上がった。
そして。そうそうと俺に向き直る。
「週末から行け。分かったな」
……はい。
「うちにくるぅ!?」
ていうか情報つながるのはやすぎ! とリンセルさん。
確かに早いな。この世界、元いた世界とどっちが科学的に進歩しているんだろう。
いや、こちらはたとえるなら魔学、か。
「週末からかぁ……私たちは帰れっていわれてないし、うーん」
「大丈夫だ。地図だけくれれば到達する」
「しかも、まさかの。交通手段使用禁止、かぁ。試されてるね」
交通手段禁止、か。
人数は一応4人までいいって言われているけど、エスペランサは確定だな。
「ちょっと考えてみる」
「そうだね。……ありがとね、シルバ君」
ジャンルをファンタジーに変えなければ…
キャラの動きが暴走している
というわけで、変えるかもしれないです