073 意識不明
本日二回目の更新です
執筆速度が徐々に上がっている気がしますね、醒眼族と合わせたら今日で3回目の更新ですし。
追記:こうしんするやつまちがえたぁぁぁぁ!!!
ランが意識を失った。
そう聞いたのは、先輩方と別れて寮に帰ってからだった。
「原因は?」
「わからないよ……」
リンナアイデル・パン・リーフさんお久しぶり。
いやー、いつの間にかランがリンセルさんとアンセルさんを彼女にしていて、すっかりリンさんの影が薄くなったような。
最初から薄いのかそれともどうなのか。
「今は安静にしているけれど、まだ目は覚まさないみたいなの」
「まあ、最近いろいろとあったんだろう?」
リンさん、悔しそうにうなずく。
どうやら、リンさんもランのことが好きだったらしい。
本当に、常に罪のある男だな、この人は。
え、俺が人のこと言えない? いやそんなはずはない。
俺はまだ何も出来ていないし、そもそもそんなに影響力を持っているわけではない。
力がたりないからな、どう考えても。
「少しだけ、ここを任せてもいいかな?」
「いいんだが、リンセルさんとアンセルさんはどこに行ったんだ?」
何か用事があるんだって、とリンさんは首を傾げる。
その細長い、知勉族特有の耳がひくひくと不安げに揺れているあたり、いやな予感がすると言うことか。
確かに、レイカー姉妹はかなりのお嬢様だって聞くし。
そういう点でも、何か問題があるんだろうか。
「たしか、シルバ君は魔剣が創れるんだっけ」
「いや、まだ……」
さすがに、2本しか完成させてないなんて言えない。
魔剣は、普通の鍛冶師は一生に1本出来ればいい方って言われているんだからな。
でも、そろそろヴァーユ先輩の分も創らないといけないし、俺も自分の魔剣が欲しくなってきたところである。
魔剣鎌【刹那≠無限】も、あれは戦闘用の魔剣で人を護ると言うよりは、人を護る手段を増やすというほうが正しい活用方法だろう。
力の圧倒的なごり押しではなく、あくまでも俺自身が考えて動かなければならないのだ。
誰かを護る……か。今の俺は誰を護ればいいんだろう? 何を護っていけばいいんだろうか。
「ま、今はまだ頼まないけど……魔剣以外に、創れるのかな?」
「わからないが、おそらく」
俺の、ヘーハイスからもらった力は【魔武具創造】だ。
おそらく、魔剣のみならずいろいろな物が創れるんだろう。
そんな力を、俺がどんな場所で使っていくのか、それがかわれば俺の未来も変わる、か。
「うー、ちょっとだけ仮眠とってくるね」
「ああ」
とんとん、と階段を上がっていく音。
どうやら、リンさんが2階に上っていったようだ。
俺は、目の前で目をつぶり、安らかな寝息を立てているランに目を向け、少しだけため息をついた。
俺も、ヴァーユ先輩とアイライーリス先輩の板挟みという状態になったら、こんな感じになってしまうのかと思って少しだけぞくっとした。
と、思ったらノックの音。
振り返ると、そこにはエスペランサの姿。
いつもよりも、獣耳も垂れているような気がするしなんだかやつれているような印象を受ける。
どこか、想い人とうまく行っていなかったりするんだろうか、心配だ。
まさか、想い人がランだってことは……ないわなぁ。
「シルバさん、最近はどうですか?」
「ん?」
「ほら、先輩に囲まれて幸せですよねって」
おおう、さすがにエスペランサの耳にも入っていたか。
俺は微妙な顔をしながら、頷いて見せた。
「いいですよね、シルバさんは。……うぅー」
「そのうなり声、流行ってるのか?」
さっき、リンさんもしていたような気がするが。
……そうか、美少女特有のものなのか。納得だ。
きっと素で出てしまうに違いない。俺の考えに間違いなどないはず。
「最近、シルバさんはうれしそう」
私なんて、必要ないですよねとややネガティブ思考になっているエスペランサの頭を無意識に撫でつけながら、俺はしばし考えた。
はて、ここまできたのはいったい誰のおかげか。
「いや、エスペランサは必要だよ。……誰の元に向かっていこうとも、出来るだけ俺のそばにいて欲しい」
「……そんなこといったって、私に残されている時間なんてもう……」
エスペランサは、何を言っているんだ?
俺は訳が分からなくて、彼女の肩に手をやったが、彼女は何も教えてくれなかった。
「ごめんね、本当にごめんね」
「何を、謝っているんだ?」
エスペランサが、一気に情緒不安定になった気がした。
今までの、優しく俺を見つめてくれるような感じは全くしない。
ただ、何かを耐えるように、泣きそうな、そんな顔をしていた。
彼女が何に苦しんでいるのか、無知な俺にはわからない。
でも、なんだか。
俺と彼女が一緒にいられる時間というのが、だんだんなくなっていくような感じがした。
時間が、本当にないのか……?
理由はわからない、しかし。
どうしても、不安を覚えてしまう。
「そういえば、俺はエスペランサの事を何もわかっていないんだけど……」
「……こんど、全部教えますから……」
そういって、エスペランサは部屋から出ていく。
残ったのは、意識の戻らないランと、立ち尽くした俺と。
……何とも言えない、もやもやとした気持ちだけだった。
ありがとうございます!