072 中庭
更新ペースが少し変わりました。
これからは、前回の更新より7日以内に更新することにします。
不定期ですが、これで結構はやく物語を進めることができるでしょう、
これからもよろしくお願いいたします。
結局の話。
先輩たちは、さすがに複数人で俺を相手どって負けるときのリスクを考えたらしく、俺に試合を挑んでは来なかった。
ヴァーユウリンス・ヴァン・フロガフェザリアス先輩とアイライーリス・ホムラ・アマテノヴァル先輩っていうのはそこまでして気に入られたいものなのか。
確かに、二人いると目の保養になること間違いなしのものではあるのだが、そこまで……という感じだろう。
少しだけ、ほんの少しだけだが色々と問題があるようだ。
差し迫った彼らの問題というのは、「今複数人で入ったら、麗しき二人が加勢してくるかもしれない」というものだったと後に藍雷―リス先輩には聞いたのだが。
というわけで今は放課後。中庭に俺と先輩二人はいた。
「この学園の中庭って、男子いないんですね」
「わざわざ花を見る人なんて、か、カップルとかくらいなんじゃない?」
アイライーリス先輩は、そんな事をいいながら「カップル」という言葉をするときに少し緊張したような感じになる。
ふむ、意識のしすぎだろう。幸いなことに、ヴァーユ先輩に気づかれはしなかったようだ。
「今日は、何か予定でも?」
「私は特にないが、どうしたんだ?」
「先輩って、部活などには参加なされていないのですね」
ヴァーユ先輩は、困ったようにアイライーリス先輩を見つめながら俺に説明をする。
「いや、自慢ではないが勧誘はされたが……どれも続く気がしなかったし、第一私は運動がそこまで得意ではないのだ」
「ふむー」
「マネージャーにも勧誘は嫌というほど来たんだけど、大体がヴァーちゃんに対する下心だらけだったからね、私が追い払ったの」
正直言って、ヴァーユ先輩も美しいがアイライーリス先輩も相当である。
アイライーリス先輩、自分の美しさを少しくらいは自覚してください。ていうか、元気そうな要素が消えると、なぜか官能的になっているんですが。
「んっ?」
そんなことを考えながらアイライーリス先輩の方を見ていると、吐息交じりに振り向かれた。
いうことなしの美少女である。
「どーしたの? こっちの方を向いてー?」
にやっ、と小悪魔的な笑みを浮かべながらこちらに聞いてくる先輩。
ヴァーユ先輩は、明後日の方向を向いて何かに気を取られており、こちらに気が付いていないようだ。
と思ったら、真っ赤な顔でこちらを振り向いた。
どうやら、視線の先には初々しい恋人のペアがいたらしい。
いや、たしかに何かもどかしい気もするが、そこまで気にすることではないような気もする。
「ヴァーちゃんは、ああいう恋がしたいんだぁ?」
「……うむ、できれば、……うぅー……」
こういう時は、鈍感な人を演じて何も聞かなかったことにするんだ。そう心の中でささやかれたような気がする。
まあ、そんなことをしなくても肝心の部分は聞こえなかった。問題はない。
こうやって、先輩たちといるが、途中で俺と一緒に居られなくなったとしても、今は問題ない。
まだ、俺は二人への感情をはっきりさせていない。
それは、自分がはっきりさせることを拒んでいるのかどうかはわからない。
しかし、俺は【龍化】するくらいに、彼女たちを護ってやりたいと思った。ただそれだけのことだ。
他に何もない、今はそれだけでいい。
そこで問題なのは、先輩方が俺と一緒にいることで、先輩方が迷惑をこうむること。
やはり、文句を言わせないためには強くならないといけないのだ。
前世には、「弱肉強食」という言葉があった。
弱い生き物は生態系に基づいて、上の強者に食われる。
「もう少し……だな」
「「ん?」」
俺は、同じタイミングで一斉に振り返った先輩方二人に「なんでもないですよ」と伝えながらも目の前にある石碑に、目をやった。
見たことのない言語だったし、俺は勿論読むことはできないが。
その文章らしきものは、どうも……。
龍と人の、関係性について書いているような感じがした。