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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第1章:邂逅【encounter】
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007 雪原

「ぐっ」


 空から降ってきて、地面にたたきつけられたような感覚がした。

 目をあけて周りを見ると、距離感がつかめなくなるほどの白一色だった。


 どうやら、雪原の真ん中に落下したらしい。

 そこまで考えて、俺は自分の呼吸を確認した。

 身体を作り変えられているとは言え、ここは異世界『アルカイダス』。

 空気はあるか、または空気に有害物質は含まれていないか。


 どうやら大丈夫らしい。何か胸につっかえている感覚もあるが、それも徐々に消えていった。


「よし、と」


 俺は次に自分の身体を確認した。

 顔などは確認できないが、身体に目立った変化は……。

 あった。


 手の甲に、黄緑色の鱗が数枚張り付いていた。

 これが、龍眼族レザールの特徴か。さすが龍人、といったところ。

 尾などは見あたらないが、どうなんだろう。

 龍神とは、流石に仕様が違うのだろうか。


 立ち上がり、周りを見回す。

 特に先ほどと変化はなく、津々と雪は降り積もっていく。

 不思議なほどに、寒さは感じられなかった。


「と。……とりあえず、歩いてみるか」


 独り言のように呟き、俺は前に歩き出す。

 広大な、先の見えない雪原の、出口を目指して。












 数時間後、俺は座り込んでいた。


「……終わりが見えねぇ」


 地平線まで真っ白。すでに5時間ほど歩いたのだろうか、体力を消耗はしていないようだが、心が飽きたのだろう。

 一度座り込むと、立ち上がる気持ちもなくなってくるのが人だ。

 俺は食糧問題を考えることにした。


「……周りにはなにもなし。……いや、あれは何だ?」


 俺は、白い塊がこちらに向かってくるのを視認して、身体が震えるのを感じた。

 決して怖さからのふるえではないことは、分かっていた。

 武者震い、という前世の東洋地方の言葉を思い出す。

 俺だって、そこには3年間通っていたのだ。その国での言葉も、現地の人と大差ないくらいにまでコミュニケーションはとれるだろう。


 ……いや、今の俺にこのような思考は必要ない。

 必要な物は、たった一つだけだ。


 素手と手に入れた特殊能力で、どのようにアレ・・に打ち勝てるか、ということだ。





 目の前に現れたのは、壁かと錯覚するほど巨大な熊だった。

 いや、熊っぽい生き物と判断した方がいいだろうか、白い毛は氷で出来た針山のように逆立ち、目は赤い。

 牙は肉食動物のそれであり、血で赤く染まっているのが迫力を際だたせている。

 体長は3メートルだろうか。のし掛かられたらひとたまりもないだろう。


 ……戦えと?


「……悪いが、俺も腹が減っているんでね」


 無意識に、そのような言葉が口から漏れ出た。

 異世界の動物が、どれほどの物なのか、調べるにはもってこいだ。


「グルゥ……」


 その熊擬きは、涎を垂らしていた。

 「今すぐお前を食らいつくしたい、骨も残さない」とでも言っているかのようだ。

 実際、前世で俺は……武器を使っていたとはいえ、猛獣を殴り殺したこともあったような気がする。

 ……何年も前のことだ、それがライオンだったか豹だったか、それすら忘れかけているが。


 軽くジャンプして、俺は身体がいつも通りに動くことを確認する。

 身体に今までの疲労は殆ど残っておらず、空腹が目立ってきたこと以外は問題なく全回復している。


 そして俺は。



 うなり声をあげる巨大熊に向かって、拳を構えた。

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