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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第5章:覚醒【awakening】
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069 片鱗

よろしくお願いします。

「どうしたんだ。この数日、シルバ君がずっと何かを考えているような気がするんだが、アイラは何か知らないか?」


 ヴァーちゃんが、私にそう聞いたのは今さっきのこと。

 彼女は私が、シルバ君に想いを寄せているなんて知らないから。

 私がヴァーちゃんの見えないところでシルバ君にアピールしているところを知らない。


「いったいどうしたんだろう……」

「へえ、ヴァーちゃんが男の人の心配をするなんて、どうしたのかな?」


 今まで、男に言い寄られては一蹴して心を折ってきたヴァーちゃんが、龍眼族レザールの少年に心配するなんて、本当に珍しいこと。

 まあ、そのシルバ君が、確かに魅力的だって言うことは私だって分かっているんだけれども……。


 魔剣鍛冶師……かぁ。

 ヴァーちゃんには悪いけど私も優秀な遺伝子は欲しいからねー。

 無理に二つの女を手に入れようとは、シルバ君も考えていないだろうし……。


「先輩」

「にゃっ!?」


 後ろから不意に向けられた声に、私は思わず変な声を出してしまう。

 振り向くと何のことなく、いたのはシルバ君だった。


「あれ? 何でここにいるのー?」

「先輩たちが言ったんじゃないのです? この授業に飛び入りで参加してもいいと言ったのは」


 あ。

 確かに、ヴァーちゃんは来てもいいっていったけど。

 まさか本当にくるとは、彼のフットワークの軽さが一目で分かる。


「ああ、決闘の実践と言うわけですか」

「そうだな。命に危険が及ぶ可能性もあるものだが」

「へぇ、これがフロガフェザリアス嬢ご贔屓の龍眼族レザールか」


 ……あちゃー。

 変な人が、やっぱり絡みに行くのね。


 今、シルバ君に絡んでいる人は、名前は覚えていないけど……。

 ヴァーちゃんのことが好きで、ポイントを稼ごうとしているのは分かる。

 十中八九、この後……。


「おい、そこの1年生。俺と勝負しろ」


 凄く小物感……何でここまで。

 完全に噛ませ犬なんだけど、本人は必死で何も見えていない。

 ここで負けたらどうなるか、なんて。

 そうやって考えたら、バラヌのほうが幾分か頭は良さそうに見える。


 ……そんなに違いはないんだけれど。


「シルバ、ここは無理にやる必要はないんだぞ?」

「いえ、やりますよ」


 シルバ君も血の気が多い性格みたいだね。

 対して、対戦相手になる男は余裕の笑みを浮かべていたけど、どうなんだろう。

 魔剣、その後も創ったのかな。

 ヴァーちゃんに売る分は、まだ構想中っていっていたけど。

 自分の分は、創っているのかもしれないね。


「……1年のくせに、いい気になりやがって」


 私は、男から漏れ出た言葉を、聞き逃さなかった。

 対するシルバ君は。


 その言葉が聞こえたのかどうかは確定していないけれど。

 笑っていた。









醒眼族ウェイカー、アイギス・ライゼィス。あと、これも教えてやろう。……【狂気の凶器バーサーカー】」


 異名……。

 今のシルバ君には、まだ縁のない話。

 ある程度の技量、それも秀でた技量を認められた人が、政府から支給されることが多い。


 それをもらっているということは、かなり強い、ということになるんだけど……。

 シルバ君は、負けるはずなんてないよね?


「……龍眼族レザール。シルバ・エクアトゥール」

「試合……開始!」


 シルバ君は、開始の合図とともに前に飛び出した。

 武器はなし、魔法による武器創造もなく、逆に相手にも魔法を使わせない。

 しかし、相手が醒眼族ウェイカーであることから、肉弾戦は相手も強い。


 シルバ君はどう攻めるんだろう……。


「ふっ……!」




 シルバ君の目が、鋭くなった……?


 彼の目は今、両目が見えており。

 龍眼族レザール特有の幾何学的な模様は、紅蓮の光を宿していた。


 そう、龍の眼。写真やデータでしか見たことのない、ドラゴンの眼が、そこにはあった。

 すべての生物を、怯えさせるような眼孔は。


 完全に、アイギス・ライゼィスの空気を呑み込んでいた。

 むしろ、その目を見たすべての人を、彼は呑み込んでいる。

 私や、ヴァーちゃんすら。


 全て。


「【地】属性中級遠距離攻撃魔法、《黔弾クロム・バレット》」


 魔法が。

 恐怖に打ち勝てなかった異名持ちの放った魔法は、シルバ君に向けたはずが、明後日の場所へと放たれ。





 ……私とヴァーちゃんに向かって、超高速で向かってくる。



「……なん……!」


 凶弾と、私たちの間に滑り込んできたのはシルバ君だ。

 その姿はすでに人とは思えないほど変容している。


 肌からは鱗は目立ち。

 後ろには鋭い尻尾。

 そして、その手足は龍の物とそう変わらない。


「シルバ君……?」


 シルバ君だった半龍は、魔法で生成された凶弾を握りつぶし、魔法を停止させる。

 そして何事もなかったかのように、相手に……アイギス・ライゼィスに突進すると、そのまま腹を殴って吹き飛ばす。


 ごろごろと10メートル以上転がされた彼に対し、半龍は空気を蹴るような動作をした。

 一瞬の静寂、その後暴風が渦となって牙をむく。


 

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