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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第4章:魔剣【magisword】
65/333

065 平安

やっと、やっとここまで到達できました!

「ヴァーちゃん、無事だったんだね! よかったぁー!」


 ヴァーユ先輩とアイライーリス先輩が抱き合っている。

 ここは体育館から少々離れた中庭だ。俺はバラヌ先輩共々これ以上何もしないようにしっかりと釘を刺し、二人を連れてここまできた。


 これから何もなければいいが。


「エクアトゥール君、ありがと」

「む、アイラ。なんだその剣」


 アイライーリス先輩が、俺にウインクをしてからヴァーユ先輩の質問に答えた。

 もちろん、その剣とは俺がさっき創った赤い魔剣である。


「エクアトゥール君から買ったの」


 とたん、先輩はみて分かるくらい顔を曇らせた。

 俺の方を向いた先輩の顔は、心なしか泣いているように見える。


 俺、何かしたのか?


「……幾らで?」

「200,000,000イデアで」


 その値段を聞き、納得したようにヴァーユ先輩は頷いた。

 よかった。安すぎるとか言われたらどうしようかと考えていた……ところである。


「この魔剣、本当に使いやすいんだよ! エクアトゥール君の創る魔剣は本当に最高だね! まさか2作品目だなんて思わないよ誰も」


 ヴァーユ先輩はアイライーリス先輩の、腕の中にひしっと抱きしめられている魔剣【守護者の炎ガーディカナル・アブレイズ】をみて。


 むすっとした顔で俺に詰め寄る。


 その顔は実に美しく、朱を帯びた頬は実に愛らしい。


「……私も、1本ほしい」










 ヴァーユ先輩に約束を取り付けられ。

 俺が帰ろうとすると、次はアイライーリス先輩に話しかけられ。


 そのまま工房棟の前まで連れてこられ。

 今に至る。


「どうしたんですか、先輩」

「私、エクアトゥール君にどんな魔剣が欲しいかなんて、一言も言っていないのに。なんで貴方は私の望み通りの剣が創れたの?」

「ああ、ということは剣がしっくりきたんですね」


 俺がそう答えると、当たり前でしょと彼女は笑った。

 その姿は。

 言っちゃあ悪いが、ヴァーユ先輩とおなじくらい整っている。


 粗野な感じはおそらく、髪型から来ているのだろうと察せられるほどだ。

 普通に髪の毛を伸ばして大人しめの服を着たら、お姫様っぽくなるんじゃ無かろうか。


 いやちょっと待て、確かさっきこの子、切羽詰まったとはいえ簡単に2億出したぞ?

 かなりの金持ちなんじゃないだろうか。

 それにヴァーユ先輩も同じのが欲しいって言っていたから、同様に金持ちなんだな、なるほど。


「今度また、よろしくね!」

「え?」

「お金は幾らでも払うし、魔石も提供する。そのかわり、貴方は魔剣を創って、ヴァーちゃんを幸せにしてあげて」

「は!?」


 突然のことに、俺が目を白黒させると。

 アイライーリス先輩は、不意に俺の首へと抱きついてきた。


 息も聞こえそうなほどの近い距離。

 その中で、彼女は俺を見つめている。


「……何を?」

「それとも、私も一緒に幸せにしてくれる?」


 ぞくっ、と。

 甘い痺れのようなものが、首から背中にかけて走り抜ける。


 驚くほど官能的な声でそう言われたのだ。男として仕方のないことだと思いたい。


「まあ、貴方とヴァーちゃんがお互い仲良くしてくれれば私としても本望なんだけど……」


 好きになっちゃったかも、と先輩は超弩級の爆弾を投下して……。

 俺から離れ、手を振った。









「思い返せば、とんでもないことになってしまった」

「え? 俺たちと別れて数時間で何があったんだよ?」


 寮。俺は、ランとウスギリ・ゲンとソファに座っていた。

 なんだかんだ聞いてみたら、ウスギリ・ゲンもここの移住者らしい。

 空いていた4部屋の一つがこれで埋まったというわけか。


 俺はダイジェストにして二人に説明する。

 こんなことはいちいち隠すものでもないから、とりあえずだ。


「先輩に対して無双、ねぇ。やっぱり龍眼族レザールは強いんだな」

「今度本当に戦おうぜ!」


 ええーーーと。

 前者がウスギリで後者がランである。

 血の気がマックスで盛んなんだが。

 なぜだ。


 ウスギリの方が幾分か落ち着いているぞ。

 どうなってる。


 とか話していると、リンセルさんとアンセルさんら女子勢が飯を盛ってきてくれた。

 俺も手伝う、と言ったんだが……エスペランサに拒否されてあえなく撃沈。

 まあ、リンセルさんもアンセルさんも、料理がやばいくらいうまいから文句はないんだがな。


 そもそも、わざわざつくってもらっている身である。

 文句なんて言えるはずがない。


「どう? 【龍眼レザリガルズ・アイ】は」

「戦闘の時に大いに役立ったよ」


 目さえ合わせてしまえば、相手は勝手にひるんでくれ、その結果隙が出来る。

 俺はそのタイミングに合わせて攻撃をすればいいだけだ。

 一方的に攻撃がしたかったら、【引斥制御グラビシオンコントロール】で四肢を固定してしまえばいい。


 あとは、膂力に任せて暴れ回るのみ。


「まあ、とにかくシルバ君が何もなくて良かった」


 リンセルさんは、そう呟くと。

 天使にも見まがうほどの微笑みを、俺に見せたのだった。













『シルバ・エクアトゥールの情報が欲しい?』


「……ああ。アイラが彼に惹かれ始めた……。どうなんだろうな、シルバは、複数人を抱えられる器を持っていると思うか?」


『魔剣を自在に創り出せるような人だ。……女の1人や2人、簡単に纏められるだろうよ』


「……そうか。……なら、安心だな」


『ただ、それが……お主ヴァーユウリンス・ヴァン・フロガフェザリアスを選ぶなんていうのは期待しない方がいいかもな』


「え……」


『ははは、冗談だ。ただ、そこまで期待するのではなく、自分の力で彼の心をつかみ取らないと』






 自分の人生は、自分で決めろ。







 そして、悔いのない人生を、過ごせ。

ありがとうございました!

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