062 龍眼
ちょっと説明多めかもです、申し訳ないです。
でも、この物語のあとに絡んでくる話なのです。
「え、これをどうしろって?」
俺は鏡に映った自分の眼を見つめ、俺は呆然としたままリンセルさんたちに訊いた。
しかし、彼女たちが首を動かすことはない。
知らないのだろう。この現象のことを。
俺も本で龍眼族についての資料を集めようとしていたが、いかんせん謎な種族だ。
外見から見ればわかるようなことしか資料として持っていないし、知っている人なんてほとんどいないのだろう。
と、俺が途方に暮れていると。
リンセルさんが、何かを思いついたようにぽんっと手を叩く。
「担任の先生に訊いてみたらどうかな? カレル・アテラット先生!」
「誰だそれ」
ひっどーい、とリンセルさんは大袈裟に驚いたふりをすると。
むすっ、と可愛らしく頬を膨らませて俺の手を引っ張る。
同時に引き寄せるようにしてアンセルさんの腕を引き寄せ、どこかに向かって走り出した。
「うぁ!? おい!」
「……リンセル……!?」
しかしリンセルさんは止まらない。
このまま、俺とアンセルさんを引っ張ったままとある教室へ。
それにしても、少し強引過ぎるような気がするが。
気にしないほうがいいんだろうな。
【授業準備室】。
そう書かれた教室の前で、リンセルさんはやっと立ち止まった。
外から見ると普通の部屋だが……もしかして中身はとんでもなかったりするのか?
「っておい! ノックもしないで入っていいのか?」
「べつにいいんじゃないの?」
随分と適当な言い方である。
そんなに面倒なことなんだろうか。
まあ、いいけど。
「カレル先生いますかー?」
「……うぃー」
間延びした声が、奥の方から聞こえてきた。
同時に、何やら騒がしい声も一緒に聞こえてくる。
この声を聴く限り、ランがいることは絶対のようだ。
「あれ? シルバじゃん」
「お、おう」
「どうしたその目?」
お、おう。
ランは俺の目の異変にきちんと気づいているらしく、怪訝な顔だ。
エスペランサは、静かに先生の私物らしき本をそこら辺にあったソファで黙々と読んでいた。
部屋は広い。おそらく目測だが、準備室ではあるのに普通の教室よりも1.5倍ほど大きいような気がする。
他の先生と関わったことがないため、準備室は皆そうなのかどうなのかわからないが、準備室というのは普通狭いものだと認識しているため、この先生が何か特別な権限を持っているという考えても間違いはないと思う。
「あ、この人がランの言っていた人か」
と、俺はランの向かい側にいる人物のことを認識した。
腕獣族だ。尖った耳からして、オオカミか何かのだろうか、随分といい意味でも悪い意味でも野性的な顔をしている。
肌の色は少々浅黒い。日焼けした、というのもあるのだろうがほぼ生まれつきのような気もする。
「紹介するよ、この人はウスギリ・ゲン」
「よろしくー」
フランクな人だった。常に自然体で話をしているような人だ。
ランとは違う意味で凄い人だと思うが。
しかも。ランとは違うが特異なオーラを放っているような気もする。
そして……だ。
奥の方から、ガタッと音がして誰かが立ち上がる。
そして俺の方に近づいてくる。
奥の方は暗く、よく顔が分からない。
しかし……この何者かは、ランと同じ匂いがした。
「リンセルスフィア嬢にアンセリツティア嬢、そしてシルバ・エクアトゥール君。僕に何か用かな?」
カレル・アテラット。フルネームはミドルネームに「ゼウス」が入るらしい。
顔は確実に平均以上。気障なセリフがよく似合いそうな顔をしている。
そして、鎖骨部分に太陽の紋章。
耳も少々とがっているところから、知勉族だと予想はついた。
何よりも、この人……オーラがやばい。
何が怖いって、転生前の神々……その人たちとほぼ同格のオーラを放っている。
「ところで、僕に何の用かな? この雰囲気じゃ、どうみても授業の予習復習についての質問ではなさそうだけど?」
事情はリンセルさんがカレル先生に説明をしてくれた。
カレル先生は、すこし悩み徐に。
そばにあった本を一冊。
手に取った。
「エスペランサさん」
「はい?」
「この本の中身、覚えたほうがいいよ」
話をしているのは俺なのだが。
俺がイライラしていると、カレルは一言。
「龍眼の覚醒、だね」
「なんだそれ」
「シルバ君。君は何故、龍眼族が龍眼族と呼ばれるのか、わかるかい?」
俺は勿論、そんなこと知る由もないため首を振った。
周りの人も知らないらしく、エスペランサですら読書をやめて聞き入っている。
カレル先生が、口を開く。
その目は、新しいものを発見したかのようにキラキラと煌めいていた。
「種族の名前には、一つずつきちんとした意味が込められている。龍眼族は、その【眼】が。【龍眼】が、理由だ」
カレル先生の話によると、龍眼族と醒眼族は似ているようで似ていない種族らしい。
龍眼族は、「龍の目を持ち、龍に目醒める」種族。
醒眼族は、「醒める目を持ち、覚醒する」種族。
正直、何を言っているのかさっぱりわからないが。
結局、何を言いたかったのか全く分からないが。
本当、何をすればいいんだろうな。
「えっとつまり、何が言いたいんだ?」
ランが混乱していた。
まあ、色々とつながっているのか同かもわからない情報を流されたら、そりゃあ混乱する。
俺も何が何のことやら。
「うーん。ありていに言えば、覚醒する能力を使えるのは【特別な】龍眼族と醒眼族だけ。【龍眼】は、その一環に過ぎないこと」
それに……とカレルは言葉をつづけた。
「君の【龍眼】は、【威圧の龍眼】だ。能力を発揮すれば、どんな人でも自分を恐れおののかせることができる」
「へー便利じゃん」
「いやいや……」
カレル先生の返答に、ランが面白いものを見つけた、というような顔をした。
いや、俺の目はおもちゃでも何でもないんだが……。
「これからは、シルバ君の意思で能力が使えると思うよ。……決して、使いすぎはダメだけどねー」
「……お、おう。…………ってあ」
さっきあのまま、先輩の存在を後回しにしてたけど……。
……大丈夫? やっちまった感が半端ないんだが。
ありがとうございました。
今日はもう一話更新できたらいいなー