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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第4章:魔剣【magisword】
53/333

053 工房棟

新章の始まりです!

よろしくお願いいたします!

 この学園、授業はすべて自由選択によって自分の好きなように組み替えられる。

 前世でいう大学のような方式だ、だから1週間の間は体験授業のために2・3年生に混じって受けようと思った授業に仮参加する事が出来る。


「シルバさんは、鍛冶系列の希望ですよね?」

「そうだな、……さすがに模擬戦闘とかっていう実技には顔を出すつもりだけど、基本的には座学になると思うぞ?」


 俺はエスペランサに対してそう答えると、彼女は少しだけ不安そうな顔をした。

 なんだかんだいって、1年の間にいきなり「剣を創るぞー」なんていう授業はしないだろうし、一年の間は座学がほとんどを占めるだろうと思われる。


 ……そもそも、俺が必要なのは「魔剣鍛冶を行うにあたって必要な材料」である。

 鍛冶の一通りの仕方というのは、鍛冶神ヘーハイスによって脳にインプットされている。

 しかし、鍛冶というのは職人のすることであり、さすがにマニュアル通りにやったら必ず成功するということもないだろう。俺みたいな論理だけをつっこまれた若造が職人の手を越えてしまったら、職人は必要なくなってしまうような気がする。


「エスペランサはどうするんだ?」

「私はですね、私は魔力の込められたアクセサリーを、戦闘の合間につくりたいなって思ってます」


 エスペランサの考えているのは、軽度の魔具だろう。

 たとえば魔力の込められた手袋。それを装備することでたとえば自分の魔力を使うことなく、その手袋に炎をまとわせたり出来るということだ。


 醒眼族ウェイカー龍眼族レザール獣腕族ケレイジにはほぼ必要のない物だ。

 しかし、女性や知勉族エリシュなどという弱い人にはそれが命図なになることだってあり得る。


「シルバさんにも、何か創ってあげたいです」

「おう、そのときは頼むよ」


 俺が返事を返すと、エスペランサはぽっと頬を桜色に染めた。

 しかし、そうなると俺とエスペランサは授業がほとんど被らないのか。

 寮であえるからかまわないきもするが、少し寂しいような気がする。


「シルバさんは、早く自分の世話をしてくれる人を探してくださいね」

「え」


 にゃ、と彼女は笑うともう少しだけ頬の色を朱に染めた。

 その顔は、気になる人が出来た顔だな。


 まあ、この学園は生徒の学力、戦闘力のレベルもかなり高いどころか、容姿のレベルもなかなか高い。

 なんだかんだ、神は2つも3つも人に与えるものである。


 ……俺も【引斥制御グラビシオンコントロール】、【魔武具創造マギア・クリエイト】、龍眼族レザールという3つを与えられているものなんだがな。

 俺に至っては、本当に神に与えられたものであるし。


「好きな人でも出来たのか?」

「……まだ数日しか経っていないので、好きかどうかはわかりませんけど、いっしょにいたいと思った人ならいます」

「はやいな」


 ……まあ、エスペランサのシルバ離れといった感じか。


「これからも、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしく」


 さすがに……ねぇ。

 俺も気になる人が出来たことだし、それもちょうどいいかもしれないが……。









 俺は学園校舎内を散策することにした。

 『クレアシモニー学園』の校舎はいくつもあり、そして部屋の数も多い。

 そのため、その中でも使う予定のありそうな校舎を捜し当てるのも一つの仕事だろう。

 正直、どうなるのかなんて予想すらつかないのだが、まあ気にしてはいけない。


 少し歩くと、赤煉瓦の校舎が見えた。

 厳かな雰囲気で、雰囲気の重みを感じる。

 そこから漂うのは炭の臭いだ。


「第3号館、工房棟……ねえ」

「新入生か?」


 突然。

 気配を悟られずにかなりの近距離で話しかけられたため、俺は反射的に後ろを向きながら拳を振りかぶり……。


 その涼風の吹き付けるような声と、太陽の光を浴びてギラギラと反射する髪の毛。

 ……数日前、入学式でみた先輩である。


「驚かせてしまったのなら申し訳ない」

「いや……大丈夫です」


 俺は頭を振って、彼女の姿を改めて見つめる。

 至近距離でも、細かいところもすべて精練されたような美しさだ。

 決してこびていないというのに、何だろう。


「どうした? 何か私についているのか?」

「いえ。見ほれていただけですよ」

「……そうか」


 ぽっ、と先輩は顔を赤くする。

 が、すぐに顔をクールな物に戻して俺に向き直る。


 ……意外とチョロいな、この先輩。

 高嶺の花こそ、堕落するときはしやすいのかもしれない。


「案内しようか? ……君の名前は?」


 そういって、先輩は俺の目を下から見上げるようにわざわざ腰を低くした。

 ……あざとい。


「シルバ・エクアトゥールです」

「ああ、噂の龍眼族レザールか。……私の名前はヴァーユウリンス・ヴァン・フロガフェザリアスだ。少々長いからヴァーユでいい」


 いきなり略称で人に呼ばせるか。

 これはチョロすぎるのかもしれない。


 お堅いどこかのお嬢様かと思っていたんだが、ただ名前が長いだけか?


「さぁ、いこうか?」

「あ、よろしくお願いします」








 校舎、大きいな。

 1階が主に工房の実習室。そのとなりが座学室。

 2階が魔剣鍛冶専門の工房。そしてその隣はやはり座学室。


 大丈夫なんだろうか、工房の隣がすぐ座学室。

 うるさくないんだろうか、ヴァーユ先輩の話によると朝から昼にかけてはずっと稼働していると聞いたのだが。

 完全防音?


 さすがというべきか何か、完全防音なのかここは?

 さらに座学室をみると、工房の方に巨大なガラスの壁があるではないか。

 丸見えなのか……。


 失敗したらただの公開処刑みたいになりそうだな。どうなんだろうか。


「先輩は、ここの授業を何かとっているんですか?」

「いや? 私はただここで剣を買っているだけだ」


 買う?

 普通ではあり得ない言葉に俺が首を傾げると、先輩はそれも説明してくれる。


「ここで創った武器や防具は、成績用に提出するのとは別に、取り引きできるんだよ」

「でもそれって……」


 たとえば、魔剣が出来た場合は……俺は価値をそれほどしらないが、たとえば数千万を越えるものだってあるんだろう?

 どうやって値段を付けるのかとか、俺は全く持って理解が出来ないのだが。

 もっとたとえばだ、自分が嫌いな人がきたときに超高額で売りつけたり、仲がいい人にはタダで渡したりすることも可能なわけだ。


「そこはコネクションだな。すべては人間関係だろう。いい鍛冶担当を手に入れることとはもちろんだろうし」

「……もしかして……」


 俺は感づいたように先輩を見つめると、ヴァーユ先輩は首を振った。


「そういう関係を求めて私は、君に声をかけたんじゃないからな」

「んなこと言われましてもね」

「信用するかしないかはシルバが決めることだろう。……私は、少なくともそんな人じゃない」


 カマをかけてみたら相手が涙目になった。

 ……こまったな、思ったよりも純粋そうだ。


 これが別にあれだったら別なんだが。

 どうなんだろう、もしかしてわざととかないだろうな。

 ……エスペランサのことは簡単に信用できたのに、なぜヴァーユ先輩にはそんなになんだろうか。

 ……もしかして俺、エスペランサのこと好きだったりとかないだろうなぁ。

 自分のことを理解出来ずに、他の人のことに関わろうとするなんて愚の骨頂だとおもうが。


「いや、少し気になっただけです、ごめんなさい」

「こちらこそ、変に気を使わせてすまない……」


 ありゃりゃ、結構本気で落ち込んでいるようだ。







 ……俺はとりあえず、彼女の機嫌を直そうとヴァーユ先輩の頭の方に手を伸ばした。

 先輩の身長は、女として考えると比較的に考えて背の高い方だろう。

 俺とさほど変わらない。


「……ん」

「大丈夫ですから。信じてますよ」

「……んん、ありがとう」


 どうやら機嫌を直してくれたようだ。

 めでたしめでたし、俺はこのタイミングを逃がさない。


 俺は振り返りながら、走り出した。


「では。俺はここで帰るんで」

「あ……」


 そんなキャラじゃないだろ、本当に。

 何でそんなキャラになってるんだよ。

 工房棟に入る前のキャラと違うぞ、キャラがぶれているぞ。






 ……かく言う俺も、こんなことを叫んでいる時点でキャラはブレブレなんだがな。

ありがとうございました!

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