043 氷焔双子
遅れて申し訳ありませんでした!
最後まで読んでいただければ光栄です。
俺はノックも程々に、ドアをあけた。
白い扉は、少しも音を立てずすぐに開き、俺とエスペランサを部屋の中へといざなおうとしているようだった。
「……ふみゅ」
「いや、怖がらなくてもいいからエスペランサも中に入ろうか。別に大したことないだろ」
「……本当に大丈夫ですか?」
さっきの人影を、幽霊とか何とかに勘違いしたのだろうか。
普通に話し声もするから、幽霊ではないような気がするが。
「普通の生体反応がするから、エスペランサの考えているようなものはないと思うが」
「人だとしても、私……仲良くなれる自信がないです」
コミュニケーション障害かな?
俺は少し考えた後、音が一時中断された奥の部屋を目指して歩き出した。
「こんにちは」
中にいたのは、女子が二人。
どちらも銀髪で髪の毛は長く、少々高級そうなキャリーバッグをそばに置いて。
興味深そうな顔で、俺とエスペランサを見つめていた。
「……んぅ?」
あざとい表情を浮かべ、微笑を浮かべるのは二人のうち背の低いほう。
今近づいてわかったが、思った以上に背が低い。150センチあったらいい方だろうか。
髪の毛は長く……というよりは長過ぎてくるぶし程まである。
焔のように紅い瞳、そしてきめ細やかで雪のような肌。
「君も、ここの住民になるの?」
「……ああ」
きゅるん、とした目で下から見つめられるのは……いったいどうなのか。
エスペランサのほうが身長は高いんだ、と確認した後俺は紙切れを少女に見せた。
ちなみに、声もどこか幼げである。
「……ふーん。私はリンセルスフィア・フレイヤ・レイカー。よろしくね」
名前が長い。覚えられるのか、と考えて俯いたところで「リンセルって呼んでくれると嬉しいなっ」と声をかけられた。
リンセル……か。どこか、気品をうかがわせる凛としたイメージの名前である。
「俺の名前は、シルバ・エクアトゥールだ」
「……エスペランサ、です」
俺とエスペランサが名乗る。
と、リンセルと名乗った彼女はふふっと微笑を漏らし、俺ではなくエスペランサの方を見た。
「苗字、はないの?」
「ひ、非公開です」
「……事情があるのかな? ごめんね」
気遣うようにエスペランサの顔を覗き込むリンセルさん。
と、彼女の隣にいた女の子が、リンセルさんの肩を叩く。
「どうしたの? お姉ちゃん」
「……関わらないことが時にいい結果になる可能性もあるから、……あまり興味を持っちゃだめ」
涼風の吹くような声だった。
見渡す限りの雪原のなか、粉雪混じりに吹くそよ風のような声。
声も美しかったが、顔も同様に美しかった。
氷の彫刻を眺めているような、鋭利ではあるが神秘的な美しい顔。
妹同様透き通った、しかし南国の海を思い浮かべさせるような深くさらに鮮やかさも兼ね備えている青い瞳。
「アンセリツティア・フレイヤ・レイカー。アンセルって呼んで」
そう呟くと、アンセルさんはため息をついてソファに座った。
なにか、気を害してしまうようなことをしてしまったのかと、俺とエスペランサが首をひねっているとリンセルさんが慌てたように弁解した。
「お姉ちゃん、こんな性格だから……ごめんね?」
「いや、性格……なのか?」
「……貴方とは関係ないでしょう?」
アンセルさんは、そういうなり本を取りだしてそれを読み出した。
なるほど、……クールを取り違えている性格だということはよく分かった。
リンセルさんの話によると、双子らしいが。
なぜ、ここまで似ていないのか。
「……むぅ」
頬を膨らますリンセルさんに、俺は大丈夫だと告げた。
こういう物は、おそらく時間がすぎていけば自然となじんでいくだろう。
……しかし、これで4人か。
確か、一つの寮で10人が同居するんだったか。
こうやって考えてみると、予想以上に多いような気がした。
「あ、よく見るとシルバ君って龍眼族なんだねー」
「……ああ」
「私たちは魔能族なの。ふふ、初めて龍眼族をみたっ」
初めて俺を見て驚かない人を見た。
と、たわいもない話をしているとドアが開く音がした。
……なるほどねぇ。
声は男子が1人、女子が1人。
……人影からするに……。
「やっはろー」
ほら、やっぱりラン・ロキアスだろ?
ありがとうございます!