040 休息
そろそろ次章。入学に入りたいですね。
最後まで読んでいただければ光栄です。
「…いったい、何だったんだあの男は」
「どうしたんです? シルバさん」
3人で、学園近くの宿屋を探す。
学園から少し歩けば、なんと高層ビルである。
この世界、ファンタジー世界だけというわけではなさそうだ。
「しかし、何故国によってこんなに……いや、都市部とその周りで違いがあるんだ?」
「『都市国家ポラリス』は、学園と国家中枢部を一気に開発しましたからね。私の村は、本当に小さな辺境の地にありますし……」
あるいみ、『カエシウス聖王国』に似ているのかもしれません、と自信なさげに呟くエスペランサ。
俺は彼女の頭をなでて、アイゼルの方を向いた。
アイゼルは、呑気に鼻歌を歌いながら俺たちに着いてきている。
入学試験を通り抜けたのがそんなにも良かったのか、俺には少し理解できかねるが。
まあ、彼は出会った頃から軟派な人だったな。
「それにしても……」
「ん?」
「ラン・ロキアスについて知らないのか? あの人、ずっと俺を見ていたんだが」
「僕もエスペランサちゃんも聞いたことがないんだったら、無名なんじゃない? 隣の女の子はかわいかったなぁ、知勉族の女の子って、如何にも女の子って感じがするよね。細いし白いし……」
と、アイゼルの脳内で話題が切り替わったところで俺は彼を放置することにした。
時間がもったいない。早く宿を探さなければ。
「この近くの宿で良さげなのを頼む」
「はいっ」
後ろから、「えー俺は?」とのセリフが聞こえたような気もするが気にしてはいけない。
結局、アイゼルはシングル部屋になるのだから。
「ごろごろー」
「エスペランサ、キャラが変わっていないか?」
すっかり緊張を解いた状態で、エスペランサは俺の隣にいた。
ベッドの上でごろごろしては、物悲しそうに俺を見つめる。
それだけでなく、頬は桜色に染まっており心なしか目尻も潤んでいるように見えて仕方がない。
いったい、彼女にどんな心境の変化があったのか知らないが、気にしてはいけない。
この娘に、異性としての魅力は感じないからである。
「気のせいなのです!」
「そうか、気のせいか」
気のせいにしては彼女の声が明るい。
頭の上、獣耳もぴくぴくしていた。
エスペランサって、なんのケレイジなんだろう。
…ケレイジは、耳でそれぞれ氏族がありそうだものな。
いや、でもこの時代にはないのか?
この世界の文明レベルが、地域によって大きな隔たりを持つのは少し……判断に困るな。
「明日からはどうするのですか? やはり、一回『龍眼族自治区』に行きますか?」
「それは長期休暇で良いような気がする。それよりも、試験の時にもらったパンフレットをじっくりみたい」
「シルバさんっぽくないですね何か。もっとこう、『なんとかなるだろ』思考の人かと思っていました」
それは偏見だと思うんだ。
どうなっているんだ、俺のイメージって。
と……、ドアがノックされてアイゼルが入ってきた。
「おいこの野郎、返事が来てからあけろよ」
「あ、ごめん……って! 何か変なことでもしていたのかい!?」
何もしていないが、もし着替え中だったとかしたらどうするんだろうか。
俺は構わないが、エスペランサとか一生彼を恨むんじゃないだろうか。
エスペランサは、学園でほかの男とよろしくやっていればいい。
俺とエスペランサの間柄は、何か微妙なものであればいいのだ。
「いや、何もしていませんけど……。どうなさったのですか?」
エスペランサの顔色は……いつも通りの落ち着いたものに戻っているな。
「剣の手入れ道具買ってくるから、ご飯は先に食べておいて」
「分かった」
アイゼルは俺が了解したのを確認すると、部屋を出ていった。
俺はエスペランサと見つめ合い、同時に笑う。
「飯にするか」
「はい!」
御読了感謝です。
前回出てきたラン・ロキアスは重要なキャラなので注目! です。