004 交渉内容
「気に入ってくれたかの?」
「いや……なんですかこれ」
プレッシャーに気圧され俺が後ろに一歩下がると、鍛冶神ヘーハイスは唇を片方だけつり上げた何とも言い難い笑みを浮かべた。
「儂との交渉に乗ってくれるというのなら。儂はこの能力を授ける」
「代償は?」
「もう一度、人生を全うできたのなら。魔剣の神となって儂の補助に入れ」
これだけを聞くと、俺に対してはメリットしかないようなイメージだ。
自由に武器・防具を作れる。
死んだら神になれて、永遠の命を手に入れる。
メリットしかないような気がするが恐らく、能力もそんなに最強ではあるまい。何処かにデメリットか制約が存在するだろうし、恐らく神となってからは年中無休だ。
この世界、白いなにもない世界に時間が存在するのかは分からないが。
「じゃあ、次は僕からの交渉内容だね」
爽やか系イケメン、龍神アグレスがその髪の毛を掻きあげながらヘーハイスの存在をどこかに押しやって進み出た。
俺はもう一歩、後ろに下がる。
「僕との交渉に応じてくれるのなら、君にこれから送る世界の中で一番力ある種族として送り出す」
「……俺が行く世界には、複数の種族が?」
若き容姿をした龍神は、俺の質問にうなずきで肯定を示した。
虚空に向かって手をのばすと、何かのモニターらしき、半透明の四角い板のようなものが生成される。
映し出されているのは、8つほどの紋章。
それがどう言った意味を表しているのかは分からないが、六角形の頂点に6つの紋章が位置し、その内側に残った2つの紋章が入り込んでいる。
「世界:『アルカイダス』には、基本的な種族として6つの種族が存在する。エリシュ・ウェイカー・サイコル・サミュリ・ケレイジ・フライドの6つだ。」
外側を囲んでいる6つが淡く光る。
「魔法に秀で、膨大な魔力許容を持つ知勉族。
瞬発力に秀で、秘められた潜在力を解放する醒眼族。
無詠唱魔法、『魔能力』を使いこなす魔能族。
機械の身体を持ち、多彩な仕掛けを身体に宿す機刃族。
最強の敏捷力を持ってして、臨機応変に状況を把握する腕獣族。
翼を持ち、三次元的な行動を可能とする翼羽族。
これを『アルカイダス』は【6大種族】と呼んでいる」
……途中から聞くのを放置していた。
こういうのは苦手だ。生前はあまりしていなかったが、ゲームのような説明は苦手だ。
訳も分からない機械の、取扱説明書の朗読を聞かされているようでいらいらする。
「……ちゃんと聞いていたかい?」
「途中までは」
「ははっ、素直だね」
龍神アグルスはそういって笑うと、光る紋章を中央の2つに変えた。
1つは煌めく光のような紋章で、1つは……。
「ここからは僕と、これからの君に関係する事を説明するよ。突然変異種族の謎法族と、古代伝統族の龍眼族をね」