035 レジリナ
また短くなってしまった…。
次回、長くします!
俺は、夢の中にいた。
目の前に浮かび上がるのは、前世の記憶。
戦場の、記憶。
守りたかった人が発した、銃声がする。
仲間の、叫び声が聞こえる。
そして目の前に現れたのは、深い紅髪の毛に同じく赤い翼を生やした、一人の女性。
血塗られた赤い剣。
斬った人の血を吸い取り、剣の力とする規格外の剣。
『守ろう、ではなく。守らなければならない、と人を認識しない人は弱いわね』
口が開き、そう告げられる。
俺は、何かを言おうとする前に……。
腹が、切り裂かれた。
「……シルバさん?」
目を開けると、そこには心配そうな顔をして俺の額に手を当てるエスペランサと。
「大丈夫かい? 随分とうなされていたようだけど」
同じく、心配そうな顔をしているアイゼルの姿があった。
俺は頭を振って、自分に何も問題がないことを確認して起きあがろうとする。
……が、エスペランサに止められた。
「少しは安静にしてください」
「いや……水浴びにでも行こうと思ってな」
確か、テントからそう遠くない場所に河川があったはずだ。
昨日襲いかかってきた魔獣も、真っ昼間からは襲ってこないだろう。
とりあえず、周りを詮索するもおかしな部分は見つからない。
静止していたとしても、明らかに形状がおかしいものは分かる。
幸い、ここに針葉樹は前世とそう変わらない形をしている。
「……エスペランサ。大丈夫だから」
「でも……」
しかし、俺がもう一度大丈夫だということを伝えると彼女は不本意ながら、という顔でうなずいた。
起き上がり、アイゼルの方を見る。
彼はというと、微妙な顔で俺を見つめていた。
「やっぱり、ふつうの道路を歩いた方が良かったんじゃないか?」
「地図を見たが、この森を突っ切る方法が一番早い」
なるほど、と納得した様子のアイゼル。
これで納得できたことに俺は驚きだ。
「早いことに越したことはないからね。ところで、町には何時着くんだい?」
森を抜けて4時間。
空も紅く染まりかけた頃、俺たち3人は町に到着した。
今回は最北の村ではなく、それよりも少し大きな『町』である。
……大きさは、『アイリス』よりも少し大きいくらいか?
町の名前は、『レジリナ』。
整地された石畳の道に、白い建材で建てられた家々が並ぶ。
「ここは雪が積もっていないんだな」
「地面から熱を感じますね」
地下にパイプで配管されて、熱を与えているのか?
それとも……魔法か?
どうでも良くなってきた。
快適に過ごせればそれでいい。
「ここから、『クレアシモニー魔法学園』まで歩いて2日ほどですが、どういたしますか?」
シルバさんの体調を察するに、休むことをお勧めしますとエスペランサ。
テントとか買わないと……シルバが中に入れてくれないし……、とアイゼル。
俺はうなずいて、宿屋を確保する事に決めた。
「エスペランサ、どうする?」
「何をです?」
頭の上にハテナマークを浮かべたエスペランサに、選択肢を提示する。
「俺と同室か、アイゼルと同室か、個室か」
「シルバさんと一緒でお願いします。何かあったとき、私一つでは何ともなりませんし」
「ねえねえ、俺は?」
アイゼルが悲しそうな顔でつぶやくが、エスペランサは首を振って俺の影に隠れた。
おお神よ、だの呟くアイゼル。
正直、俺もこんな短期間でどれだけの信頼を得ているのか分かる言い物だったと実感。
エスペランサは、安全も確保できた。
一石三鳥である。
突っ込むな。
御読了感謝します。