033 優遇条件
1話1話の文章を長くできなくて申し訳ありません。
「え、もしかしてこの森を通るのか!?」
Uターンを初めて1日の夜。
俺は、俺たちは来た道に戻ってきた訳なのだが。
森はやはり……不気味だな。
アイゼルは目を点にして唖然気味に、俺に問いかけると。
「……ちょっとハードすぎるだろ……」
と嘆いていた。
何がハードなのか全く分からない。
この森、特にエスペランサのいう魔獣というのもあまり生息していないように見える。
それとも、本能的にエスペランサや俺を避けたのかどうかは知らないが。
「この程度ですものね?」
「……俺に背負ってもらってよく言う」
エスペランサ、腕獣族だからもう少し体力を付けような?
いや、獣耳のある種族は全員、体力のあるものだと思ってはいけないな。
ふむ。
「あのときは、まさか獣道を歩くとは思っていなかったので歩きにくかったんですよ。今回は新しいのを買ってきましたので!」
靴の問題なのか。
なら、今回は背負って遣らなくても大丈夫だな。
俺は未だ「無理無理……」と首を振っているアイゼルを見やり、一言。
「じゃあここでお別れだな」
「いいえ着いてきますすみません!」
やはり一人というのも怖いのか?
しかし、醒眼族はもう少し……ガチムチのイメージがあったんだが。
不屈の戦士、のようなイメージだったのだが違うのか?
……やはり個人差か。
「もう少し頼りがいのある奴であったら……。できることは何かないのですか?」
「うーん。ないかな!」
「帰れ」
連れてくるべきじゃなかった。
俺とエスペランサがため息をついて呆れていると、アイゼルは慌てたように、「ジョークだよ! ジョーク!」と繕った。
正直、何もできないんだと思うのだが。
「い、一応小さい頃から各地を飛び回ってたからね。知らないものはないんじゃないかな!」
筋肉隆々なのに知的キャラ?
いや、知識を蓄えるのはエスペランサだけで充分なのだが。
隣でエスペランサの目が、燃えるように光ったのは別の話だ。
「俺が聞いているのはそういう話じゃないんだが。自分を守る能力はあるのか?」
「甘いね。俺はウェイカーだよ?」
アイゼルの話によると、ウェイカーという種族は昔から戦闘種族で通っているらしい。
魔法は不得手だが、武器を使ったり拳を使ったりということは得意なのだそうだ。
「……魔法が存在する世界というのは、戦いにおいて魔法が最強なのではないか?」
「その認識は違います。ここ『アルイカイダス』の基本的魔法詠唱は知勉族を除き省略できません。つまり、詠唱している途中で攻撃を仕掛けられれば魔法が不得手な種族でも充分に勝機はあるのです」
俺の意見に対して、何ともまあ分かりやすい突っ込みをしてくれるエスペランサである。
そして、彼女の口調に面食らいながらもアイゼルは補足を加える。
「俺、親にエリシュも含まれているからね。魔法も純粋なウェイカーよりは得意なんじゃないかな」
「そうなのか。……ところで話は変わるが」
うん? と俺の方を向くアイゼル。
俺は昨日から感じていた、違和感をぶつけることにした。
「なぜ、君の祖父は俺を選んだんだ?」
「うん? 龍眼族って、鍛冶が得意だって有名なんだよね。鍛冶に限らず、技術系全般」
だから、と彼は続けた。
「だから、祖父の考えとしては『クレアシモニー学園』に行った後、店で働いてほしいんだと思うぞ」
「面倒だな」
俺はため息をついた。
まあ、独り立ちを結局はさせてくれるんだろうけども。
「貸し一つ、というわけか」
「まあ、ある程度手伝ってくれたら解放してくれると思うけどな」
……取りあえず、魔剣を創ったらそれを贈ればいいか。
この世界で魔剣、というものは非常に貴重なもので、価格は億を越えるのも少なくないと聞くから、すぐに解放してくれるだろう。
ちなみに、俺の創れる武器は魔剣に限らず、魔法で打った武具全般らしい。
御読了感謝いたします