032 Uターン
そろそろ学園…
そろそろ…
「ところで、もし俺がその……クレアシモニー? だっけ? そこに入学決定したら、エスペランサはどうするんだ」
「私ですか? 私のことはお気になさらず」
明日返事を聞くと言われ、俺とエスペランサは宿屋に戻ることにした。
龍眼族の鱗というものは、嫌でも目に付くため俺は手袋を装着した。
それでも、鏡を覗いてみたら目が変質していた。
瞳に、金色の線で六芒星が描かれている。
……今まで視界に問題がなかったことを考えると、別に大丈夫だということか。
「気にするなって?」
「私は、すでに入学許可を持っているので」
「はぁ?」
驚くほどハイスペックだった件について。
正直、シルバさんの旅につきあうことになったので、入学に間に合うか不安でしたが、とエスペランサ。
そうならなぜ着いてきた。
「エスペランサは、その『学園』のことを何か聞いているのか?」
「一般的な家にすむ私にも入学許可が下りるくらいですからね、すばらしい場所だと思いますよ」
「工房はあるか?」
「工房?」
鍛冶するための、と俺は付け加える。
すると、エスペランサは目を細め、可愛らしく笑ってみせる。
「勿論、あそこには何でも揃っていますよ」
「なら安心だな」
「なにがです?」
エスペランサは頭を傾げていたが、まあ気にしない方向で。
取りあえず、宿屋に戻って寝よう。
入学試験に行くのは決定。
取りあえず、長期休暇もあるとエスペランサが言っていたから、そのときに行けば問題はない……はず。
「……そうなると思っていた」
「一緒にいける人がいて助かった。一人じゃあ不安だったんだよね」
勿論、アイゼルも着いてきた。
予測はしていた。しかしまさか本当に来るとは思わなかった。
俺は悪くない。
ただ、何かしそうでいろいろと怖い。
「……構わないが」
「やったね!」
「……エスペランサニ、テヲダシタラコロス」
そう言ったら、顔面真っ青にして首が取れるくらいに縦に振ってくれた。
さすが。
いや、これは俺がエスペランサに恋をしているとかということではなく。
一応、彼女の命を預かっている身だからだ。
……学園に入学できたらその先は知らないが。
……と言うか、エスペランサって同い年だったんだな。
「よろしくね、エスペランサちゃん」
「よろしくお願いします」
取りあえず、入学したら魔剣を創ってみよう。
この世界に、どのような鉱物があるのかは知らないが。
きっと、前世では考えもしなかったものが創れるに違いない。
……えっと、確かに前世では前世でとんでもないものが創れていたような気もする……が。
「えーと、よろしくシルバ」
「よろしく頼む」
さて、次なる旅立ちへ。
……俺とエスペランサは、Uターンではあるが。
御読了感謝します。
長すぎる序章。正直言って学園に入るまでが序章。(30話以上)
これが作者に足りないといわれる構成力。