313 神の心臓(シルバ)
神剣。神族のみが創り出せるとされ、神や神に選ばれた人々にしか扱えないとされる剣が、そこに存在していた。
ヒョウリやヒョウガには何も感じなく、「本当に?」と半信半疑であったが希望神の加護を現在進行形で与えられている俺には、そこから放たれる神力を感じ取ることができる。
感覚のみで、これはヤバイと感じられるのだ。
何が、とは言えないけれど。こう、言葉にできない緊張感や威圧が容赦なく襲いかかってくる。
隣にいるエスペランサを見つめれば、彼女は飄々としていた。
神剣って、たしか神の本質を傷つけられる唯一の剣、だよな。
俺も魔神剣程度なら創り出せたが、あれはどうも神剣よりも魔剣よりのものらしく、やはり傷つけることは不可能だという。
神よりであれば、神魔剣と呼称されるんだってさ。
「あの像は、龍神の分身体ですよね?」
長老にそう質問したというよりは確認したのはエスペランサであった。一見彼女は一体何を口走ってるのか、と長老は目を細めたが、すぐに俺の言っていることを思い出したらしく、わかりませんと頭をさげる。
どうも、長老は既に300程の歳をとっているが、そのずっと前からあったらしい。龍眼族についての文献はこのアラグルズにしか殆ど存在しないけれど、歴史書にも神話書にもほとんどの場合この像の記述があるのだという。
「シルバさんなら感じているのかもしれませんけれど、剣からだけではなく像からも神力が感じられます」
彼女の話を受けて、そちらに意識を向けてみると確かにそうだ。
剣全体から神力が溢れている代わり、像には一部だけであるが人間でいう心臓のあたりから僅かに漏れ出しているのがわかる。
そもそも神って人間みたいに臓器があるんだろうか。
「変な考えを起こしてません?」
「いいや?」
「ちゃんとありますよ。心臓ではなく、核ですけれど」
ほら、やっぱり人間とは違うらしい。俺の知っている人間と、この世界の人間だってほとんど一緒だけれど、違いはある。心臓の下あたりに魔法を蓄えるための臓器があるんだって。
自分の体を分解するわけにもいかないから、確かめるわけにはいかないんだけれどもね。
「核は神剣でしか破壊できず、傷をつけたとしても半分以上を体から切り離さないと回復していきます」
エスペランサは、自分の弱点を曝け出す形で説明をしてくれた。
神剣がなければ破壊できないし、神剣はそもそも限られた人と髪にしか使えないから問題はないのだろう。
神にだって法はあります、とエスペランサは言っていた。ならそれを守る必要はあるのだろうし、それなら問題は何もないのだろうな、と思って。
「さて、ここからどうするかな」
そういうはなしをしにきたわけではない。俺は首を振ってどうやれば神をここに呼んできたらいいのか考えた。
希望神のように、精神世界で会話するのかもしれないけれど、とにかくこの場に俺が来たということを伝えなければならない。
とりあえず、神剣でも持ってみるとするか。何か変わるかもしれないしね。
「え?」
俺が神剣に向かって手を伸ばすと、長老は正気かと言うように俺の方を見つめた。
神剣が神とつながっているというのなら、それに触れて反応を起こす方が早いような気がする。天罰が下りそうとか、神罰が襲いそうとかっていう可能性は決して拭えないけれど。
「あー、流石にそれはアレですね、私が呼んできますよ」
エスペランサはそういって、姿を消してしまった。
それこそ本当に存在自体を消してしまったのだ。長老も流石に信じるしかなくなったのか、こちらをまたもや畏れるような顔で見つめている。
さて、待ちますか




