310 試験突破(ハル)
「【炎翔】」
私は再びそれを唱えた。どちらかというと、今回は数を試してみようかなって考えて、4匹ほど召喚してみる。
それぞれを動かすのは自分自身で、自我を持って動いてくれることなんてない。正直、私としてはコントロールする手間が面倒で軽く軌道をそらす程度しか私はしない。
「わたしは早くこんなの終わらせたいんだけど?」
私は苛立つようにそういって見せた。正直苛立ってないし、寧ろ実験台にして申し訳ないと思っているのだけれど、早く終わらせたいから。
でも、護衛たちは一切引こうとしなかった。そういうふうに、レイカー家に教育されているのかなって考えることはできる。できるんだけれども。
ちょっと、自分の命を大切にした方がいいよ、と考えながらそういえばこの中では死なないんだっけと考えなおした。
死ななければ問題はないというわけでもないんだよね、後遺症が残っていくのかもしれないんだし。
「【焼緋鎖】」
私は別の詠唱をした。できるだけ早く勝負をつけさせるのなら、相手を出来るだけ早く気絶サせるに限る。
私は、前の世界で「彼」が使っていた鎖というものを手にした。
自分自身ではどうってことないけれど、これはとらえた相手を焼く能力を持ってる。銃の弾丸と同じように、手から常にリソースを供給し続けているためてから一定時間はなれない限り消えることはない。
鎖を振るって、一人ひとり正確に気絶させていく。できるだけダメージの少ないものでやらないと。
「はい、終わったよ」
私は鎖を手からぽいっと放って、レイカー一家をみた。
あまり驚かれてはいないようだ。まあ、私がシルバくんの元恋人だからかな。それとも、何かあるかなって考えて。
「次はどうする?」
考える。どうしようかな、って。正直ルークエルリダスさん本人はゴーレムではない。普通に考えれば、そう関係ない試験は受けないほうがいい。
前までの私なら、律儀に全部やっていた気がする。
でも。やっぱり違うね。自分のやりたいことだけをやる。目的を達成するためにすべきことだけをしよう。
「直接たたかいましょう、ルークエルリダスさん?」
私には前の世界で使っていた神の武具がある。
世界が違おうとも、あの武具はそもそもが異世界の産物。
私が本当に必要とするのなら、きっと世界の壁すら貫いてこの世界に、私の手に向かってくるはず!
私は妖しく彼に笑いを投げかけてみせた。含みのある笑みは、予想を越えた効果を相手に与えるって分かっているから。
もちろん、その予想通りにいった。相手は確実に警戒したし、それを吟味しても私は勝機が充分にあると判断できる。
正気だよ。ちゃんと自分の頭のなかでシミュレートして、結果を出した結果なんだ。
「いいだろう。……今からする?」
そういって彼は魔剣を抜いた。
闇夜に溶けこむように刀身は黒く、光を反射せず逆に九州すらしているように感じられる。
ああ、これがシルバくんが戦った魔剣なんだなって。
私はこの世界の真剣を知らないけれど、凄いものなんだなってわかる。
素晴らしいことだってわかるよ、本当に。
でも、私の銃には勝てないと思うよ、ね?




