302 王城到着(ハル)
「あそこが王城だ、見えるだろう?」
クレインクインさんに言われて、私は目の前に広がるお城を呆然と見つめていた。
正直、ネクスト君が住んでるお城のほうが大きいということは言わないでおいたほうが良さそうね。
多分、この山岳地帯が敷き詰めっている土地の関係でそんなに大きなモノは建てられなかったんだとおもう。お城というよりは要塞に近い何かにも見えるし。
「ちなみに、表面に見えているものだけではなく後ろにある山そのものも王城の一部です。中は要塞になって、有事の時は王都にいる民は全員入るようになっています。……理論上ですが」
前言撤回。ネクスト君の住んでいるアルカディア城よりも確実に大きかった。
そんなの聞いてないよ、と言いたかったけれど本当に言われてない。
レオさんの説明を聞きながら、私はこの2人に対して妙な違和感を抱いていた。
リンセルさんやアンセルさんとは確実に違う。
確かに、リンセルさんとアンセルさんはクレインクインさんと立場が違うし、もちろんレオさんも違うはずだ。
でも、立場の話じゃない。なんだか、違う。
シルバくんではないけれど、どこかシルバくんや、私に似た何かを感じる。とくにレオさんの方。
「じーっ」
「……ええと、見つめられると少し恥ずかしいのですがどうかなさったのですか?」
レオさん、本当に恥ずかしかったのか顔を赤らめてこちらを見つめる。
シルバくんの好みそうな人間だな、と想った。ダウンファール君の時から、彼は顔から表情を出しやすい人に優しかったし。それは男でも女でも関係なかった。
あのとき、付き合ってすぐに彼は私の表情が自分を惹かせたとはっきり公言した。
「いや、なんでもないよ」
私は、性格が男の人のようだだとよく言われる。正直、そうなのかもしれないとも思っているけれど、自分の事を男だとは思っていない。
これでも、ちゃんと男の人を好きになるくらいの感情は持ってる。……今は精神上シルバくんに限定されているけれど。
「なんだか、ハルさんってシルバさんに似ていますよね」
「そんなことないんじゃないかな……」
私は正直彼をよくわかっていないから。彼はこの世界にきてから、多少は変わってるんだなって見ててよく分かる。改善されているところもあるけれど、極端になったなって想ってしまう。
ネクストくんに憧れた人生だったからなのかな。やっぱり、心のキャパシティが、余裕が出来上がっているような気がするの。
「よし、到着したぞ」
クインさんの声がして、レオが一足早くなんだっけ、このデルエクス? っていう近未来で使われそうな乗り物から降りた。
彼女たちに案内されながら、王城の門をくぐる。私の方を見て怪訝な顔を擦る人はいない。
「ここに、人種や出身で差別する人はいない」
人の眼を見ようときょろきょろしている私に、さも当然といった口調でクインさんは説明してくれた。
私は人を観察するのが好き。相手が何を考えているのかとか、探るのが好きだ。
相手の考えていることがわかるというのは、相手自体を理解することにもつながるから。
「少しここで待ってくれないか。すぐに執務室の用意をしよう」
そういって、レオさんを置いて彼女は慌ただしく政治家たちに囲まれて行ってしまった。
「聖国王っていつもあんなかんじ?」
「はい。……クレインクイン様は、自分のことをまだまだ未熟だと考えているようです」
覚悟が足りないと、とレオさんは心配そうな顔で彼女を見つめていた。
私には王がどうとかよくわからない。日本に明確な、実権を持っている王様なんて存在しないし。
でもあの世界にいた王子様のことを考えるとでもやっぱりあれはちょっと特殊だなって想ってしまう。
あの人は、シルバくんと一緒で無理をし過ぎなのだ、と。




