028 衣服選択
はぁ、早く自治区についてくれないかな(すっとぼけ)
最後まで読んでいただければ光栄です。
朝、俺は妙な息苦しさを覚えて目を開けた。
胸を圧迫されているような、そんな息苦しさだ。
俺がうつ伏せに寝ているのか、それとも……。
……やはり、エスペランサが抱きついていたのか。
今、エスペランサは両腕を俺の腰より少し上に回して布団の中に全身を入れていた。
勿論、腰なんかに手を回しているということは、頭は俺の胸あたりにあるということ。
……息苦しさはこれか。
金髪が太陽の光を浴びてきらきらと煌めいている。
獣耳は、彼女が息をする度にぴくぴくと動く。
……なんというか、可愛らしいな。
「ん、んぅ……?」
考えているうちに、起きたようだ。
まどろんだような顔で俺を見つめ、次の瞬間エスペランサは飛び上がった。
「はぅあ!?」
「抱きついてきたのはエスペランサだからな?」
しかし、俺の言葉を無視して彼女は起き上がり、服の乱れを確認した。
……いや、俺何もしていないんだが。
特に怪しい場所が見つからなかったのか、エスペランサは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
そして、俯かせた真っ赤な顔のまま、一言。
「……す、すみませんでした」
気にするな、と俺は首を振って立ち上がる。
そして、彼女に声をかけた。
「出かけるぞ」
俺はこの世界に転生してから、下着をのぞいて1着の服しか持っていない。
白いローブ状のあれだ。
さすがにこれで旅を続けるのもどうかと思ったため、俺は新しい衣服を購入することにした。
この世界、エスペランサや商店のおっさんが前世と遜色ない衣服を身にまとっていることからファッションの文化が俺と変わらないことを認識した。
後は、俺好みの服が見つかるかどうか……だが。
「……こんなものでいいんですか?」
「ん?」
「真っ黒、ですけど」
エスペランサは、俺のファッションセンスに文句を言いたいらしい。
黒はすばらしい色だ。俺自身を夜の黒い闇に溶かしてくれる。
どこに問題があるって言うんだ。
「……言い方は悪いですけど、完全に不審者です」
正直、一緒に歩きたくない……とエスペランサには大不評だった。
さすがに、それは一大事のため。
黒を基調に、エスペランサにコーディネートして貰った。
「動きやすさを最優先に頼む」
「はぁーい」
はいはい、とため息をつきながら彼女は一着一着選んでゆく。
その姿を見て、俺はふと疑問に。
「そういえば……」
「どうしましたか?」
「エスペランサは、学校とか行かないのか?」
ぴたっ。
エスペランサの動作が止まる。
そして俺のほうを向いて、申し訳なさそうに。
「いえ、私は……。確かに推薦書は来ましたが、それはシルバさんの用事が終わってからでいいかなと」
「どういう意味だ?」
さっぱり意味が分からない俺に、エスペランサは一言。
「つまり、途中から編入するという意味です」
「は?」
全く話が頭の中に入ってこない。
ここまで分かりづらい話があっただろうか。
「詳しい話は部屋の中でお話ししますよ。……それよりも、こんな感じでいいですか?」
なんか、うまくはぐらかされた気がするが。
気のせいであればいいのだが。
もし俺のせいで、ということなら俺はどうすればいいのだろうか……。
「取りあえず、『龍眼族自治区』に到着したら俺はどこか通える学校を探す……」
「……シルバさんの能力値なら、通えない教育機関なんてないと思います」
ないのか。
……いや、でもさすがに女子校は無理だろう?
御読了感謝いたします。
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