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「異名付きって、学園生活で特別扱いされたりするのか?」
「それは、されたくて言っているんですか?」
何気なくエスペランサに聞いてみる。
相変わらず、エスペランサは希望神の姿のままだ。
そこまでひどい世界干渉をしていないためか、他の人々からは「数ヶ月見なかったらすごく成長していた」ていどの認識しかされていない。
「されたいわけないだろう」
変に目立つのは、自分の動きを制限されるのと同じである。
それであるからにして、目立ちたいとは思わない。
俺はリンセルやアンセル、エスペランサや他の一部の身内だけで事足りているのだ、関わる人間というのは。
それなのに、人々が俺を珍しそうにもてはやすわけだから、注目が最初から変に集まっているというのに今回の事例である。
確かに、レイカー家の次期当主が決定したとなれば、ある意味ではかなり重要な問題にはなるんだろうが。
すくなくともこの学園……『クレアシモニー学園』には関係のない話である。
「俺は俺を好きな人たちが、俺に対して特別だと思ってくれればそれでいいんだが」
俺の言葉に、彼女は貴方らしいと微笑む。
その笑顔によって突然、ひとつの記憶が頭のなかに入り込んで俺はなんとも言えない気持ちになった。
どうしても、少々ながら寂しさを持ってしまうのだ。
……俺はきっと、彼女の名前を忘れることが出来ないのだろう。
……神になったら、ちゃんと時をさかのぼって、彼女に逢いに行きたい。
エスペランサという最愛の人がいたとしても、この思いは永遠に変わらないのだろう。
「……なんだか、前世を思い出しているような顔をしていますね」
「そのとおりだからね」
一生忘れることが出来ないから。
でも、彼女のお陰で今も俺は支えられているなって。
「前の世界に、戻りたいのですか?」
「戻りたくない、って言えば嘘になる」
「……そうですよね」
エスペランサは、全てを知っているような顔でこちらをみている。
実際、全てを知っているのだろう。
「今から、シルバさんに将来のことを話します。……いいですね?」
何かを覚悟したような顔だ。それをはなしすることで、何かこれからが変わるのかもしれない。
でもそれを知っている。
「ああ」
俺は返事をした。将来を少しわかるというのなら、それを知らない術はない。
……たとえ、結果的に俺の身体が滅ぼされようとも。
「3人」
「3人?」
「これから、さらに3人の女性がシルバさんへと加わります」
3人。今でもすでに3人いるというのに、3人。
何か意味があるのだろうか。
「1人はヒョウリさん。1人は対をなすヒョウガという少女」
ヒョウリとヒョウガ。覚えておこう。
彼女はその理由を教えてくれない。なぜ出会うのか、全て知っているはずなのに。
「そして最後は……貴方が最も望む人でしょう」
………最も、望む。