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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 鶴琉世乃
第12章:極光【Aurora】
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242 希望神ホープ

自重なんて知りません、

 エスペランサはそれが言いたいかのように、容赦なくイスフィールへ襲いかかった。

 最初は人間態のままで。それでも迷法族カラミタというものは普通ではなく魔法の威力が半端ない。

 もちろん、為すすべもなくやられている。あれは不可侵の攻撃だ。その攻撃を妨害することを許してくれないのだから本当に恐ろしい。


 体術でやりあったら絶対にエスペランサが負けそうだが、今回はどうしようもなく、イスフィールが不利だろう。

 逆に考えれば、魔法というものは使える人が使えば一方的な試合展開も可能と言うことである。

 そもそも、この世界の魔法ってなぜ存在しているのだろう?


「エスペランサさんって、あんなに強かったっけ」


 リンセルは、エスペランサの正体を知らなかったのかな。

 アンセルは知っていると思うけれども。


「本当、頭おかしいくらいに強い」

迷法族カラミタだったっけ。やっぱり強いね」


 でも、一回戦ってみたいかも、となんだか好戦的なリンセル。

 イスフィールのこんな状態を見ても思っているあたり、マゾなのかもしれない。




 と、ここでエスペランサが攻撃を中断した。

 地面から顔を離しながらきょとんとするイスフィールに、エスペランサがとった行動は、神格化である。


 エスペランサの身体から光が迸っている。

 迸った光から、エスペランサの髪の毛がさらに長くなって地面に着くほどになる。

 身長が伸び、アンセルと並ぶくらいにまで高くなった。

 幼さが残っていた顔からはさっぱりそれが溶けるようになくなり、凛々しさを増した顔へ変化する。


 それにしても、胸は膨らまない。

 ……悲しい。


「はっ!? っへ?」


 相手は何がおこっているのかわからないのだろう。

 そもそも、そのきちんとした姿は俺が龍眼レザリガルズ・アイでとらえているにすぎない。

 おそらく、このまばゆい光がある間は、誰もその姿をとらえることができないのだろう。


 だが、それでいい気がする。


「……!?」


 光が収まった頃、希望神ホープは服装すら変わっていた。

 俺が転生する直前に着ていた服だ。

 いや、それも正しくは違う。


 少々、現代風にアレンジしているのか露出が多い。

 ヒマティオンかな、とは思うがこの言葉を知っている人は少ないだろう。


 絵画から出てきたような姿だ。しかし、いくら鮮明に美しく書いたとしても、やはり本来の美しさにはかなわない。


「なにあれ」


 俺の隣で、リンセルが愕然としていた。

 俺の額にある紋章と、希望神ホープになったエスペランサを交互にみつめて、顔色が悪くなる。


 一体何が起こったのか、察したのだ。

 自分の親友が、一体「誰」を怒らせたのか、今頃気づいたのだろう。


「シルバくんは、知ってたの?」

「何が?」

「エスペランサさんが、ホープ様だったって」


 神の存在には何も思わないのか。

 まあ、この世界のことだからよくわからないけれども。


「うん」

「いつから?」

「約1年前、俺が転生する前から」


 俺の言葉を聞いて、リンセルはさらに顔色が悪くなる。

 蒼白を通り越して、むしろ黒くなっているような気もして、ちょっと本当に問題。


 彼女は後悔しているんだろうか。


「イスフィールちゃんは消されちゃうの?」

「指一本で出来そうだし、そうしたら誰も彼女のことを思い出せないだろうな」


 俺は除いてだ。

 俺は希望神の加護を受けているため、この紋章があるかぎりそれは続く。


 もちろん、そういうことはやめてほしいと思っているが。

 ……それにしても怒りが収まってないんだよな。


「……」


 神の姿になったというのに、エスペランサは一言も声を発さなかった。

 思えば、手に光が収束して何かの形に変わっている。


 ……弓だ。

 簡単な装飾すらない、純粋な光の弓に箭をつがえて神はイスフィールに向ける。


 彼女は何もすることが出来なかった。

 避けようなどと考えることすら出来ないはずだ。

 自分が何をしてしまったのさえ、考えていられないのかもしれない。


「反省なさい」


 涼風のような声がした。この世界で聴いた中で、一番美しい声がした。

 それは人々の声を通り過ぎ、すべての人に届く。


 彼女を待ち受けるのは、断罪か、神罰か、それとも神の怒りか。



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