024 旅立ち(2)
最後まで読んでいただければ光栄です。
エスペランサがすごすごと、親に許可を貰いにいく間。
なんの予定もない俺は、商店へ再び。
「旅立ったんじゃなかったのか?」
「……野暮用で」
さすがにダイナミックすぎる反抗期だ。
この世界、通信技術がどうなっているかわからないが、前世の世界よりは低いと思われる。
ところで、エスペランサの年齢を聞いていなかったような気がするな。
昨日の『学校』という単語と、彼女の背丈を考えて14くらいだと予想するが、よく考えてみれば彼女の種族もわからないため何がどうだかわからない。
「……龍眼族は、防寒具も必要ないのか?」
「確かに昨日の夜は寒かったが、凍え死ぬというレベルではなかった」
そこまで言って、俺は気がついた。
……エスペランサを、許可さえ出てしまえば連れて行くと決めているあたり、何か防寒具も必要だろう。
「いくらぐらいで売ってくれるんだ?」
「何を?」
「仮拠点として数分で展開が出来るもの、またはそれに準ずる防寒具」
まあ、簡単に言えばテントと毛布である。
俺には必要ないだろうが、持っていて問題はないだろう。
幸いなことに、昨日ここで買ったバッグは空きがある。
「……テントは5万でどうだ? 毛布は2万」
……えらくふっかけてきた気がする。
俺は首を振ることで否の態度を見せ、口を開いた。
「二つ併せて3万5000なら買おう」
「ぐっ」
やはりふっかけてきていたか。
予想通りだ。
しかし、俺も結構引き下げた気がするな。
……少なくとも、昨日貰った箱の中には15万イデア以上入っていた。
あのときいろいろ買った後の話である。
「……それは店がつぶれちまう。……昨日の買い取りでとんでもないことになっているんだ、手数料も無償にしてやっているというのに」
「4万が最大額。それ以上でなら買わない」
ここは田舎だ。
そんなに質の良いものは取り扱っていないと見える。
商品をみた限り、実際そんなに質は良くなかった。
「……じゃあ4万で。まいどあり……」
日も暮れる頃、やっとエスペランサがやってきた。
もこもこの白いコートに、茶色のこれまたもこもこブーツ。
……本気で森を抜ける気はあるのか。
「やっと許可が取れましたぁ……」
その顔は疲れ切っており、これ以上の移動も困難と推測する。
俺は肩にバッグの紐を掛け、エスペランサを背負った。
「ひぁ?」
間の抜けたような声を発したエスペランサを無理して、俺は走り出した。
「ちょ、ちょっとシルバさん?」
このくらいの重量、特に気にならない。
俺はすこしだけ考えた。
「……この林を抜けるぞ」
「はい!?」
こうして、俺は。
いや、俺たちは。
最初の村を抜けた。
御読了誠にありがとうございました。
この話で、第2章は終了になります。
重ね重ね、なかなか学園に向かわない件についてはお詫びを申し上げます。
次の章で、学園に入学する準備をすべて終わらせます。