234 強くなる
ラン視点
この世界の女というのは、全員が全員強い男を好む。
何でもかんでも、強いことが最優先だ。強くて優しい、強くてかっこいい。そんな単語がずっと飛び出してくる。
権力も「力」であるから重宝はされるんだろうけど、それでもといった感じなのだ。
俺は、空を見上げてはぁと息をついた。
「クソみたいに悟った顔をしてるな」
「コノ世界がよくわからないんだよ」
俺の隣にやってきているのは運命神人間態のフドウ・サカキだ。
人間というのはよくわからないものだ、と不思議な表情。
「自分自身もわかってないのにな」
「……ああ……うん。でも俺はホープのこともよくわからない」
彼の話によると、希望神ホープというのは神というより人間に近い部類にはいるのだという。
だからこそシルバに恋をすることができたのか、と納得できてしまう。
それに、シルバはパートナーである彼女と完全に良い仲を築くことができているのだからさすがとしかいえない。
俺とフドウは……もう、なにがなんだかって感じだけれどもな。
「俺はお前をサポートする。ただ、俺が与えるのは力そのものではなく、きっかけだけだ。それでいいな」
わかっている。俺だって、人から直接与えられた力は欲していない。
でも、神の力にすがることだってたまには必要だろう。
特に、今回は血迷ってなんていない。
次こそは、何かを手に入れるために力を欲するのではなく、誰かを守るために強くなりたいのだから。
「フドウは、運命を擬人化した神なのか?」
「娯楽、運命、単なる運。それらの総合みたいなものだな。だから楽しいものとか結構好きだぞ」
なるほど。と思う。彼は概念を象徴としているからこうなのか、と。
しかし、そうしたら希望神も同じなんじゃないか、とも考えてしまうのだ。
「アイツは特別だから、なにも手出ししない方がいいぞ。やるならやっぱりエクアトゥールかな」
特別。特別な神ってなんだろうか、と俺は考えた。
唯一神とかだったら特別なんだろうけれども。
「俺たちと人間は種族が違うだけだ、いいな」
「……おう」
「簡単だろ?」
お前に言わせたら、もっと明確な異世界人なのかもな、と笑ったフドウの顔は、輝かんばかりの何かを持っている。
でもまあ、なんだかんだいって神は神なんだよな……。
「まあ、……この話はやめにして冬休みの予定を聞こう」
「リンやクリーゼと、シックザールの本家に行くつもりだよ」
じゃあ俺も、とフドウは笑う。
たぶん大丈夫だろうけれど、シックザール家っていうのはレイカー家の護衛をする一族らしい。
……将来的に、俺はリンセルたちに配属されたらどうしよう?
嫌な予感を覚えながら、しかし俺はそのことを頭から追いやった。
今、そんなことを考えたって仕方のないことなのだ。
そんなことよりも、今クリーゼやリンになにができるか考えた方がいいのかもしれない。
「でも実際、なにもできっこないよな」
「……そんなこと言うなよ」
フドウは俺を励ますように、宙にとある言葉を浮かばせた。
視覚化された言霊は、【異能力】を表している。
「これをまず、使えるようにしよう」
「え。でも種族的に」
「問題ない。転生するときに、君になにも細工をしていないとお思いか?」
……まさか。
俺が自分の状況を理解する前に、彼は答えをさらっと言う。
無限の可能性を持っているということではないのか、もしかしたらこういうことは。
「君には、すべての種族の因子をぶち込んである。……訓練さえすれば、いくらでも強くなれる」
……なるほどね。




