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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第12章:極光【Aurora】
232/333

232 爪

「久しぶり、でもないかなシルバ」


 ルークエルリダスさんは、前であった時と同じ笑顔で俺を見つめていた。

 俺の方を見て、アンセルとリンセルの顔を見て、彼女たちにも挨拶をする。


「リンセル、アンセル。おかえり」

「ただいま帰りました、お父様!」


 アンセルは元気いっぱいだ。目覚めてからやっと出会えたという喜びと、おそらく俺が隣にいるからだろう。

 さきほどから、チラチラとこちらを見つめている。

 かわいい。気づかれていないと思ってるのか、時折十面相してみせたりしているがどれも魅力的だ。


 しかし、リンセルは挨拶を返さなかった。

 暗い表情のまま、俯いて何を考えているのかわからない。

 彼女のことがちょっと心配になったし、本当に大丈夫かと不安にもなった。

 もちろん、そんなことは【デルエクス】の中にいる時でもわかっていたことだ。


 レイカー城に近くなれば近くなるほど、彼女を取り巻く雰囲気というのは陰鬱となっていて。

 


「リンセル、後で私の部屋に来なさい」

「はい……」


 ルークさんは、そんなリンセルを見て思うところがあったようだ。

 彼女を心配はしたが、彼女を慰めるのは俺の仕事ではないような気がした。


「ゼロ、シルバとヒョウリの部屋を案内してやってくれ」

「はい」


 ゼロ=オールはレイカー家の護衛に態度が変わっている。

 こちらを見てウインクこそしているが、身体は改修後のごつい機械騎士姿で礼をしている。

 バイザーも取り付けられ、彼の表情は完全に見えなくなった。


「疲れただろう、晩餐までゆっくりするといい」


 リンセルを押しとどめて、ルークさんは俺達に告げる。

 どうしようか、さて、自分の部屋で何をしようかな?




「で、やっぱりすぐに魔剣鍛冶に入る」

「車の中で寝たし、特に疲れてないからな」


 俺は部屋に到着するとともに、簡易魔剣鍛冶用の作業台を取り出す。

 何をするかはそれだけでわかるだろう、魔剣鍛冶だ。


 とりあえず、新学年が始まるまでに試作品を正式にプロトタイプへとしたい。

 クインを出来るだけ安全な状況にしておきたい。

 だから、こうやってするしかないのだ。


「試作品ですか?」

魔鎧まがいに組み込む」

「レオさんのためなんですね」

「いや、クレインクインのためだ」


 あくまでも、騎士に力は与えるがそれは騎士の使える王の為に使ってもらう。

 だからこそ、もし反逆の牙を剥いた時は、レオを破壊するようにもできている。

 クインは優しいから、そういうのは嫌がるだろうが。


「で、どうするんです?」

「クローがいいかなって」


 ワイヤーで射出するか、どうしようか。

 とりあえずトリッキーな方法で相手の意表を付くというのも必要だ。

 魔法を糸状にして、回収可能にするのも面白いかもしれない。


「仕込みで?」

「うん」


 とにかく、できるだけ早く完成させないと。

 俺も納得がいかないし、クインにも心配させてしまう。


「あ、そうだ」


 俺は、その射出できる「爪」に制約をつけようと決めた。

 レオの安全も必要だが、今回……特に試作品である今は、クインに害が及ばないのを再前提にするべきだ。


「エスペランサ、ちょっと手伝ってくれ」


 彼女の名前を呼ぶと、その神は嬉しそうな顔でそっと微笑むと、こちらを覗きこんだ。


「なんですか?」

「どこまで遠く、魔法の糸が続くか試したい」

「……分かりました、とりあえずレオさんを想定して魔力を放出してみますね」


 なんだ、その能力は。

 思った以上にすごいものだな。


「このくらいでしょうか。転生者で、多めに補正がかかっているとしても」

「城から城の端までか」


 300m位か。このくらいなら十分だな。


 俺はそれでいいと判断し、作業台でそれを組み込み始める。

 


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