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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第2章:旅立【departure】
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023 旅立ち(1)

ついに旅立ちですね。


最後まで読んでいただければ光栄です。

 日差しがまぶしい。

 俺はベッドから起きあがると、大きく伸びをした。


 昨日の疲れはないに等しい。

 相手側がそれほどに低レベルであったことが幸いしたのか、無傷に等しい状態で帰還したからだ。


 俺は部屋から出て下の階に向かう。

 と、やはりエスペランサがいた。

 泣きはらしたような顔で俺を見つめるも、すぐに顔を俯かせてしまう。


「おはよう」

「……おはよう、ございます」


 そういえば、昨日父と喧嘩していたな。

 しかし、そのような言葉を俺が出すことはない。


 エスペランサは顔を俯かせたまま、俺に話しかける。


「今日、もう旅立たれるんですよね」

「そうだな。……とりあえずもう一度商店に向かって、必要になりそうな物をそろえるつもりだ」


 しゅん、とするエスペランサ。

 ……俺、何かしてしまったか?


「1日だけだったが、世話になったな」

「……はぃ」


 聞き取れるか聞き取れないかの境目。

 そんな声でエスペランサは呟くと、立ち上がる。


「そうですね、……朝ご飯は何に致しますか?」

「……何でもいいよ」


 客人の分際で朝ご飯を指定するなんざ、図々しいにもほどがあるだろう。

 そもそも、この世界にどんな料理が存在するかすら知らないのだ。


 蒸かした馬鈴薯ジャガイモだったっけか。それと米っぽい粒状の穀物。

 この世界にジャガイモが存在することすら、俺にとっては新発見だったが。


 ……正直、旨かった。


「……出来ました。パントーストで申し訳ないです」

「ありがとう」


 パンすらこの世界に存在するのか?

 四角い食パンにしか見えないのだが。


「小麦とジャガイモを混ぜ合わせたパンです。……口に合いますか?」

「……おいしいよ」


 少々塩辛さがあるような気がするが。

 パンの上には小さな魚が乗せられており、一見するとニシン。


「……貧しい村で申し訳ありませんでした」

「いや、こういう家庭料理を食えるっていうのも。いいものだな」


 その一言で、エスペランサは顔を真っ赤にしてしまった。

 はて、変なことを口走ったか?









「おい、聞いたか? 暴漢が全員いなくなったらしいぞ?」


 商店に向かったら、店主に馴れ馴れしく話しかけられた。

 まあ、昨日の『教育』が効いたのだろう。

 取りあえず、俺は無関係を装う。


「そうなのか? ……まあ、それは良かったな」

「本当に大助かりだ。一体誰がやってくれたのか、それともあいつらが見切りをつけてくれたのか……。昨日の夜、結構騒がしかったんだが……」

「昨日は結構早くに寝たから知らんな。……保存食のようなものはないか?」


 俺は肩を竦ませ、次の件へ話を移す。

 そう、必要なのは保存食である。次の目的地へ行くには、最低でも徒歩3日だと聞いた。


 医療も生活も充実しているこの世界なら、交通機関も発達しているのかと俺は考えたのだが、違ったらしい。

 どうも、この田舎だと徒歩で抜け出すしかないという。


 まあ、道も舗装されていないところを見るに予測はしていたが。


 馬はある程度、整えられている道の方が走りやすいと聞いたことがある。


「保存食は……これだな」

「高すぎないか?」

「田舎の村だ、我慢してくれ」


 冗談にならないほど高い。

 此処近辺の地図が1000イデアに対し、一食分の保存食はそれに迫るほど。

 それなら、この村はどう飯を食べているのかと思えば畑があった。


 なるほど、ベリーハードだ。


「もう少しやすくできないか?」

「……無理!」


 数分考えた後に拒否がでるとは思わなかった。

 ……仕方ないか、買うのはあきらめよう。


 正直、狩りをすればいい話なのだ。


「ナイフのような、武器はないか?」

「5000イデアから。短剣ならあるがどうだ?」


 ……なるほど、相場がわからない。

 しかし、この短剣は……質が悪いな。

 何年も放置されたように刃は欠けているし、さびている部分も見える。

「……いや、いいよ」

「そうか? 残念だな」


 ……やはり拳で狩りをするか……。











「……旅立つのはいいんだけど、なぜエスペランサが?」

「……家出します!」


 いや、するなよ。

 今は村のはずれである。


 今さっき、エペ父とエスペランサに別れを告げたはずなのだが。

 なぜ、着いてきているのだ?


「ダイナミック反抗期です」

「……それで責任を俺に押しつけるな」


 此処から先は、この前の雪原とは変わって針葉樹林。

 正直、エスペランサを守りながら此処を抜けるのは一苦労しそうだ。

 ……いつの間に、俺はエスペランサを連れて行くことに脳が切り替わっているのやら。


「私がいれば、シルバさんのわからないこととか……」


 必死だな。

 とても必死だな……。


「……わかった。ただし」


 俺はエスペランサの身体を逆に向けた。











「親に納得して貰ってこい」

旅立てず!


御読了ありがとうございました。

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