022 教育
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「……はぁ」
俺はため息をつくと、目の前で山積みになっている十数人の男たちを見つめた。
全員で14人。
なかなか、大仕事だったとは思っている。
時間経過は1時間ほどか、そんなに時間は経っていない。
最初からそんなに時間をかけるつもりはなかったのだが。
俺は手を払いながら立ち上がると、タチュレンの頭を強引に掴んでそばの壁に押しつけた。
「さっさとこの村から出て行け。わかったな?」
「うぁぁ……」
口の中は血であふれていることだろう。
【引斥制御】と膂力に物を言わせて殴ったら、水平に10メートルほど吹き飛んだ。
そのときは、自分の力に驚いた。
そして、それで貫通しない相手の身体にも戦慄してしまう。
「分かったかと訊いているんだが?」
「ひ、ひぁい」
顔面を蒼白にし、何度もこくこくと頷いたタチュレンを離し、俺は男たちに背を向ける。
早く部屋に戻ろう。
そして俺は、夜の村を引き返したのだった。
「……です! なんで……!」
「ダメだと言って……!」
窓から進入。
すると、下の階からなにやら言い争う声が聞こえた。
エスペランサがエペ父となにやら喧嘩しているようだ。
途切れ途切れにしか聞こえないが、エペ父がエスペランサの何かを許可しないような内容だった。
詳しいことは分からないが、なるほどエスペランサもなかなか頑固なところがあるようだ。
明日までの、たった1日のつきあいだが、初めて出会ったこの世界の住人である。
このことは、一生忘れないだろう。
「すー……はぁ」
俺は深呼吸をすると、血の附着した手袋を今日買ったバッグの中に隠しベッドに倒れ込む。
身体は洗っていないが、明日の朝に風呂場を貸して貰えばいいだろう。
さすがに、今音を立ててはいけないことくらい分かっているからだ。
それにしても……、思うことがある。
先ほどの戦闘の中で、あの人たちは魔法を使っていないが、どういうことなのだろうか。
魔法というのはこの世界にはないのか? 神々の説明という物は間違っているのか?
生活に応用されているわけでもなく、また戦闘などにも使用されていない。
この世界の魔法というのは、どういう目的で使われているのだろう。
「情報が少なすぎるな」
結局、俺は考えるのをやめた。
旅が始まれば、きっと理由は分かってくるのだろう。
それなら、来るべき時まで悠長に待っているべきだ。
「……いち、学校はどうするんだ?」
「来年からです! それも何とかします!」
……【学校】?
俺は聞こえた単語に、思考を一瞬停止させた。
この世界にも学校はあるのか。
それもそうか。
……俺は、前世で満足するような学校生活というものを経験したことがない。
世界一、と呼ばれる基準の『超能力を訓練する』教育機関に通っていたのは2年だけ。
学校、か。
しかし、そんなことを考えるうちに……。
俺の意識は、いつの間にか眠りへと誘われて行っていた。
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