217 特殊鍛冶室
「すみません、この学園に工房はありますよね?」
「あるけど……」
数日後の昼、さて工房に行くかという時間帯に、ちょうどレウスに話しかけられる。
「一緒に行くか?」
「そうですね。ちょっと下見に行ってみたいんです」
下見、とは。
ええと、魔剣鍛冶用の作業台はあったが、技武具用はあったかな。
あ、この際だ。彼に教わることができるのか、ちゃんと聞いてみよう。
「俺に、技武具の作り方を教えてくれないか?」
「ええ、技武具はマニュアルがあるくらいですし、私なんかでよろしければ」
マニュアルあるのかよ。
……技武具って、もしかして一般に復旧していたりするのかな。
「装飾品として、好まれる傾向にあるものなんですよね。美しいものは本当に美しいですし」
逆に、戦闘ではそこまで使われません、とレウスは少し問題がありそうに顔をしかめた。
精密機械みたいな扱いなんだろうか、とちょっと頭をひねってやってみたが、全然訳が分からない。
「簡単ですよ。設計して、成型して、組み立てて、中に電気を流し込むんです。魔導機械と基本は同じですよ」
魔導機械か。
なかなか、ロマンのある名称だな。
「でも、この世界に存在する機械ってほとんどが魔導機械なんだろう?」
「いいえ? 魔導機械であるものは、ごく一部限られたものだけですよ」
このくらい常識でしょう? といわんばかりの口調に、俺はおうと答えることしかできなかった。
レウスはまだ、俺が異世界から来た人だとはしらない。
だからこそか、怪訝な顔をしていた。
まだ、彼にいっていない理由は簡単、見定めきれていないからである。
レイカー家は先祖が転生者だったから、言っても問題なかった。
先輩方は最初の方こそ戸惑ったものの、俺の存在については認めてくれている。
エスペランサの存在は、どうも認めようとしていないらしく俺とは今疎遠になっているけれど。
「龍眼族というものは、やはりこういう常識には疎いのですか?」
「そういうこと。オウラン帝国の種別じゃないからね」
オウラン帝国で、まれに見た俺とは違う感じの龍眼族。
龍眼族についての文献が少なすぎるせいか、同種のはずなのに俺すらわかっていない。
……エスペランサにあとで聞いてみるか。
それが一番早そうだな。
「じゃあ、案内するからついておいで」
「はい。よろしくお願いいたします」
それにしても、魔剣鍛冶にマニュアルはないのかな。
……あった方が助かるんだがって、たぶん使うのは俺くらいか。
「技武具の作業台の方は……こっちか」
特殊鍛冶室。
魔武具、技武具の機材や作業台がそろっている場所が新設されていたらしい。
そこに入るには、どうも届出が必要らしく、今は入れない。
入れない代わりに、巨大な窓があったためそこから覗くことにした。
「うん、完璧ですね」
「設備は整っているのか?」
「はい。技武具は作るための機材によっても、もちろん材料によっても出来が違いますが、ここの機材は最高級のものですね」
目をキラキラと輝かせている械刃族の少年は一刻も早く中に入って作業に取り掛かりたいと、そんな顔をしていた。
カレルに相談したら、届け出を拝借してくれるのかな?
それよりは、事務に聞いたほうがいいんだろうか。
取りあえず、……ちょっと材料を探そうかな。
「シルバは、何をやっているのです?」
「材料を見てるんだよ。……新しい剣を作ろうかと思って」
「シルバって、魔剣を何本も完成させている、豪運の方だとお聞きしておりますが」
「間違っては……いないのか?」
豪運どころの話ではないと思うが。
あれだ、宝くじで1等が当たる100万分の1よりも少ないといわれている。
金をかければ魔剣が必ず出来上がるということもなけば、しかし魔剣を作るために費用はかかる。
でも、俺の場合は違う。
ヘーハイスからもらった「能力」によって、成功するようにできている。
だから、運ではない。
運だとしても、もう何回か交通事故で死んでいるんじゃないかっていうくらいは当たっているんだ。
「取りあえず、鉄とこれで作るか」
「……今度魔剣鍛冶をするとき、私もいていいです?」
「うん」
順序とかに成功の秘訣があるんだったらまだいいんだが。
ない、って言うのが結論で。もう考えること何もなんだよな実際。




