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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 鶴琉世乃
第11章:二柱【Two gods】
210/333

210 神と人

新章、発足。

「へえ、そういうことですか」


 結局、夏休み後半のほとんどはカエシウス聖王国のほうで過ごしてしまった。

 ルークエルリダスさんには深く、まだ考える必要はないといわれたが、それでも深読みしてしまうのだ。

 これから、どうやってやっていけばいいのだろう、と俺は。


 彼からもらった懐中時計を、手放せなくなっていた。


「どういう意味か、説明してほしいのですけれども」


 ところで、だ。

 今、俺は目の前に人間態の神が二人いる状況に立たされている。


 エスペランサを隣に位置させた俺の反対側には、一人の械刃族サミュリを隣に位置させたラン・ロキアスが立っている。

 本当に珍しい、それどころかこの世界に入って初めで怒りという感情を表に出したのではないかというような、エスペランサの口調。


 それは、まぎれもなく械刃族サミュリに向けられたものだった。


「どういう意味も、こういう意味だけれど?」


 しかし、彼は飄々と彼女の言葉を躱す。

 あまり考えたくはないが、つまりはそういう意味らしい。


 俺には、エスペランサがなぜここまで怒っているのかわかっていないが。

 それでも、その械刃族サミュリがエスペランサの言っていた「運命神」であることはすぐに検討がついた。


「ま。そこにいるシルバが俺の転生させたランを虐めてくれたらしいからね」

「虐めるも何も、勝手に転生させた貴方の責任でしょう」

「そう。だから、俺はこの世界に降りてきた」


 人間態の運命神は、エスペランサの言葉に対してかぶせるようにしながら、意地汚い笑顔の片鱗を見せた。


「それとも、俺がこの世界にいたところで困ることでも?」

「そうですね。私たちの邪魔はしないでください」


 バッサリ。

 そう言い放ったエスペランサの言葉には、冷たいナイフのような鋭さすら思わせていた。


「俺は、ランの側につくというだけだ」


 そう返した相手も、負けじとすごみがあった。

 すごみがあったところで、何かが変わるわけではないのだが。


 それでも、一か月以内に決闘をした俺とラン・ロキアスが。

 お互い顔を見合わせて困惑する程度には、二人の仲は良くなかったのだ。







「シルバさん、少し……我慢ができなくなったらごめんなさい」

「ん?」


 二人と別れた後、俺は学園の近くにある喫茶店に彼を連れていき、飲み物を注文した。

 【コーヒー】と明記されていたのだが、この茶色の飲み物は俺の知っているアレなのだろうか。


 香りも、味も、そのままだったが。


「俺には、神々の関係なんてわからないけれども。……仲がよろしくないことはすぐに分かった」

「でしょうね。……シルバさんは、【神】という存在をどのようにとらえていましたか?」


 質問をされ、俺は数十秒考えた。

 どのように、エスペランサと出会う前は捉えていたか?


 この世界に入ってきて、思ったよりも時間はたっていないというのに。

 この世界での生活1日1日が、俺には斬新すぎて細かいことは覚えていない。


「……そうだな。この世界に来る前は、無神論者だった」

「ふむ?」

「悪魔の証明と一緒だと思ったんだ」


 最初は。……おかれていた状況もあった。

 大切な人を立て続けに失った俺に、手を差し伸べてくれたのは神でも天使でもなかったし、それは従兄弟とその家族だった。


 魔法、とは違う異能力を有するあの世界。

 神なんていなくとも、よっぽどでないと何とかなる世界であった。


「でも、今は違うのですね」

「違うも何も、目の前に本物がいたら信じるしかないだろう?」

「……でも、ある意味では神も人間と同じなのですよ」


 と、エスペランサは意味ありげにこちらを見つめる。


「そもそも、私たちは【神】とは名乗り、呼ばれているものの、本当の名前は何というのかわかりませんしね。【唯一】の存在ではないので」


 人間が、自分たちを【人間】と名乗ったのと同じといいたいのだろうか。

 確かに、エスペランサはもっと無表情で淡々と物事タスクをこなすようなものだと思っていたが、それは全く違うものだったし。


「そもそも、【神】という存在は別に【人】の上位種族でもなんでもないですし、ある意味では【異世界人】という一つの区分なのかもしれません」


 ……至言だな。

 もう少し、神というのはプライドの高いもので、崇められるのに幸福感を感じるようなものだと思っていたのだが。


 いや、それはエスペランサが【特別】だからだろうか。

 いずれにせよ、彼女が俺に対してどのように接してくれるのかが一番だとは思うが。


「シルバ、さん?」


 俺は、エスペランサが自分に呼びかける声を聴いて我に返った。

 ずいぶんと長い間、俺は考え事をしていたようだ。

 とりあえず頭を振って、本題にはいることにする。


「で、我慢って?」

「私が力を使って彼へ干渉していない今のことです」


 つまり。


 エスペランサは、運命神が目に余るようなことをしたら、遠慮しないといっているのだ。

 世界が壊れることだけはやめてほしい、かな。


 いろいろと面倒なことになりそうだし。




 いや、世界が破滅したら面倒という感覚もなくなるのか。

「神様」についての皆さんの考え方は人それぞれだと思いますが。

少なくとも、物語の一つとして考えていただければ幸いです。

エスペランサは自分の事を、【神】という一個体の【異世界人】だとしか認識していません。


キャラクターの一人として、考えていただければ幸いです。

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