202 転生者VS転生者3
俺が地面に着陸しているころ、ランは何もしてこなかった。
いや、実際には何もできないのだ。実際何をやっているかといえば、遅い来る冷気に対抗しようとしているのだろう。
しかし、【龍眼魔法】というものは一つ一つが膨大な量と、とんでもない濃度をもつ魔力の塊だ。
それは、彼の持つ魔力なんて花にもかけないほどに良質なものである。
完封勝ち。この言葉はある意味ではとても爽快感のあるものだが、ある意味では実に喪失感を伴う。
俺は右手に持った魔剣で彼の喉に突きつけながら、彼に話しかける。
「降参したほうがいい」
「……だれが、諦めるもんか」
冷気が吹き飛んだ。
思わず一歩引くと、彼の周りから。
螺旋型の魔力が、渦を巻きながら二重螺旋を描いている。
「【超絶能力開花】」
彼が叫んだワードは、俺の聞いたことがないものだった。
いや、一度何かの文献でちらりと見たことはある。
龍眼族の【龍化】や【龍眼】のように、醒眼族にしかない種族特性。
「……いいや」
俺はふっと息を吐くと、5本の魔剣を再び手から離し、空中へ浮遊させる。
相手がいくら種族特性を使おうとも、龍眼族の前では無意味なのだ。
……いや、正しくは俺の前では無意味、か。
「……ルークエルリダスさん、神剣の力、借ります」
独り言のように、レイカー家の当主への言葉を呟き、俺はゆらゆらと狂ったように足取りがおぼつかないラン・ロキアスを見つめた。
「……ええと、この神剣の能力は。……なるほどね」
剣を抜けば分かる。魔剣と明らかに違う、その剣の【志】が感じ取れてくる。
魔剣は人が選ぶものだが、神剣は剣が人を選ぶということか。
特に構えなくてもいい。持っているだけで、ラン・ロキアスの動きは『彼』が教えてくれる。
未来予知か、推測か。そのくらいに正確なため、彼が自身の身体を強化したところで俺の戦闘スタイルに変わりはないのだ。
一つ、残念なことといえば。
最後の魔剣が、完全にお役御免になったことだろうか。
まあ、いい。
最後の切り札は、披露しておくだけ披露して本質を明かさないのが適任だろう。
それだけで、相手の抑制になれば万々歳だ。
今は、手札を切る時ではない。
今回の切り札は、この神剣【闇夜の月】なのだから。
「起動」
俺が唱えると、突っ込んでくるラン・ロキアスと俺との間に濃い闇の空間ができた。
真夜中、霧の中を歩いているような感覚になっているだろう彼だが、こちらからは分かる。
まるで、あるいみではマジックミラーのようなものだろうか。
こちらに見え、あちらには見えない。
だからこそ、相手がどんなことをしようが関係ないのだ。
龍眼族は、この世界に存在する8種族の中で最強なのだから。
それに、転生者という要素が加わっただけで、ほぼ無敵といってもいいだろう。
……とっても幼稚なたとえ方だ、無敵なんて、小学生くらいしか使わないというのに。
「なぜだ……なぜなんだ!」
彼の目線から外れるように自分の身体を動かすこと数分、彼はいらだちと焦りから呪詛のように言葉を繰り返す。
精神すら、この闇は使い方によって蝕んでいくということだろうか。
「もう、面倒だ」
俺ははぁと息を吐くと、5本の魔剣をそのままロキアスの身体に突き刺す。
勿論急所は外してあるが、その代り血は吸われ続ける。
「……チェックメイト」
まだ抵抗をやめようとしないロキアスを殴って気絶させ、強引なチェックメイト。
……こんな終わり方でよかったのかは疑問だが、とりあえず、俺の目標は果たされそうだな。




