表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 鶴琉世乃
第10章:決戦【Duel】
191/333

191 第二陣

ちょっと前に、30万文字超えてましたね。

そしてあと少しで200話、なのです!

 ゼロ=オールとラン・ロキアスの戦いが始まった。

 ゼロは、体の一部を全身の鎧からさらに変形させて本体から切り離し、一本の巨大な斧槍ハルバードを生成。

 それを構える。


 ロキアスは、真っ白な剣を持っていた。

 特に装飾はなされていなかったが、魔剣を作っている俺の目からはすぐにわかる。


 あれは、【魔剣】だ。


「あれは」

「どうしましたか?」


 となりで、落ち着きのない声を漏らしたのは当主本人であった。

 何が恐ろしいのか、そのまま剣を、見つめている。


「あれを手に入れているということは、カレルは完全に彼を認めたのだな」


 あきらめたような、ため息。

 ルークエルリダスさんは、俺に先ほど渡した【闇夜の月ミッドナイト・ムーン】と兄弟剣である「それ」の話を始めた。


 どうも、有名な剣であることは間違いないらしい。


「魔剣を作っているシルバ君には申し訳ないが、あっちのほうが上等だ」


 兄弟剣が、神剣であることからそのような予感はしていたが、どうも俺の思い通りだったらしい。

 俺はふぅと息を吐き、自分の実力不足を反省していると、右手をとる感触があった。


「大丈夫です」


 エスペランサだ。

 彼女は、俺の手を握ると柔らかい笑みをこぼす。

 そして「彼とあなたは違います」と諭すように言葉を紡いだ。


「あの人は、新しく手に入れた魔剣すべての力を扱いきれておりません」

「それは、どういう?」


 俺には、彼女の言っている意味がわからない。

 希望は自分の胸から消えることはなかったが、不安もまた、自分の胸から消えることはない。


「シルバさんには龍眼魔法がありますし、その【龍眼レガリアス・アイ】もありますからね」


 あの人になくて、自分にしかないものはいくらでもあるではないか、と俺を安心させようとするエスペランサ。


「たしかに」


 確かに、俺は転生した身だが。

 神々に見初められて、手に入れた能力ならいくらでもあるではないか。


 武器鍛冶神のヘーハイスからは【魔武具創造】をもらった。

 それは今も魔剣づくりのために役立っている。


 龍神アグルスからは、龍眼族レザールとしての身体をもらった。

 その特典としてついてきた【龍化ドラゴフォーゼ】と【龍眼レガリアス・アイ】、【龍眼魔法】は、使いこなせてはいないものの自分の自信につながった。


 運命神スロツ=トールからはこの境遇をもらった。

 神にしてはスロットマシンという【運】に頼ったものだったが、ちゃんと今の状態を引き当てられた。


 そして、希望神ホープからは。

 俺にしか持っていない【引斥制御グラビシオン・コントロール】をくれ、『エスペランサ』として俺の支えになっている。


「そうだな」


 ここまでかんがえたところで、俺は何も自分に問題がないことを悟った。

 心配することなど何もなかったのだ。

 彼には持っていないものを、俺はいっぱい持っているのだ、と。


「それにしても、この状況はキツい、かもしれない」


 ついに、ルークエルリダスさんは焦り出した。

 その状態を見ながら俺が下のほうを向くと、そこには確かに魔剣に押されているゼロ=オールの姿がある。


 あいまいにしか分からないが、どうも純粋に力だけで押されているらしい。

 あの魔剣の基本能力は、見れば分かる通り瞬きによる目つぶしだろう。


 しかし、械刃族サミュリにそれが通用するとは思えなかった。


 ……もしかして、ロキアスは俺たちの知りうることのない、固有能力を持っているのではないかとどうしても感じてしまうのだ。

 俺にも、あるのだから、彼にあってもおかしくないだろう。


「いえ、発動するような特殊能力を、ラン・ロキアスは持っていませんよ」

「でも、それならなぜ」


 一時的に筋力を倍増させる、というような能力を行使しているのではないのか。

 しかし、もしエスペランサの言っていることが事実だというのなら、俺はとんでもない勘違いをしているのかもしれない。


「もしかして、あれが醒眼族ウェイカーのそもそもの能力、なのか?」

「いいえ、彼は……」


 エスペランサは、圧殺する勢いでゼロ=オールを抑えているロキアスに焦点をむけると、息をのんで後ずさる。


「彼は、三種以上の混種族なのです。……論理上、あり得ないのですが」

「三種以上? でも、親の親も混種族だったばあいは稀だがあり得るんだろう? ……あ」


 ここまで考えたところで、俺は勘づいてしまった。

 気づいてしまった、といえばいいだろうか。

 彼は、俺と同じ転生者なのである。


 親も、その親も。特に普通の人間である可能性が高いのだ。


「それが、彼の特殊能力というわけですか。現時点ですくなくとも、腕獣族ケレイジ醒眼族ウェイカー知勉族エリシュの種族は混同されているようですね」


 龍眼族レザールには及ばないが、物理原理に迫るほどの身体能力を持つ【腕獣族ケレイジ】。

 魔法は不得手だが、それを凌駕する隠れたポテンシャルを持つ【醒眼族ウェイカー】。

 逆に魔法以外は不得手、代わりに謎法族カラミタの次点で魔法的才能が高い【知勉族エリシュ】。


 なるほど、飽きれるほどバランスの取れた混種族構成である。


 少しは見習いたい、といいたいところだが見習うところが何もない。


「それにしても、なぜゼロは降参しないんだ?」


 ルークエルリダスさんの心配しているところは、別にあったようだ。

 確かに、遠目からみても分かるほどゼロ=オールの身体は火花を散らせて半身以上が故障しているだろう。

 魔導機械部分がほとんどな彼は、少しくらいなら平気なもののそれ以上は本当に危険なはず。


「ちょっと、止めてきます」


 俺はガタガタと、自分の身を案じるのではなく彼の身を案じるように震えだしたルークエルリダスさんをあとに、窓から飛び出した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ