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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第10章:決戦【Duel】
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187 可能性

「ラン・ロキアスがレイカー城へ突撃したんですか」


 急いで宿の中に入って、エスペランサに伝えると彼女は頭のおかしいくらい簡単に理解してくれた。

 俺もかなり焦っていたから、そこまでわかりやすい説明ではなかったと思うのだが、それでもわかってくれるのはさすが俺とずっと一緒にいてくれているからだろうか。


「完全に、今回私たちがこうやって旅行に行くことを見越してやってみたような気がしますね」

「まあ、取りあえずは明日に迎えが来るらしいから、戦いの準備だけしていろと言われたんだがな」


 まあ、クレアシモニー学園でのあの件があってから、一回だけで俺と彼の決闘が終わらないだろうなとは思っていたが。

 まさか、こんなことになるとは思っていなかっただけあって俺も落ち着きを取り戻していないようである。


 そもそも、今ラン・ロキアスという存在は俺に勝っているのだろうか。

 そこからよくわからないため、正直そこまで実感がないのだが。


 俺たちが帰ってきた6月から……すでに何か月たっているんだろうか。

 結構な月日は経っているはずなのだが、そこまでといった感じもする。

 少なくとも、アンセルが目覚めてからは楽しい日々が続いていた。


 だからこそ、ラン・ロキアスの事をおろそかにしていた感じはあるのだが。

 

 自然な流れでも、しかし結果としては彼からアンセルを奪った形になっているのだから仕方ない。

 だけれども、結婚の許可をもらうためだけにレイカー家に殴り込みをかけるのは、いったいどういう神経をしているのだろう?


「シルバさんは、あの時からどのくらい強くなりましたか?」

「とりあえず、エスペランサから言われた……【龍眼魔法】は、毎日訓練を重ねているよ」


 【龍眼魔法】とは、その名の通り龍眼族レザールにしか使えないとされている魔法のことである。

 別名が【古代魔法】だということでも分かると思うが、今俺たちが使っている魔法という概念の元となったものである。


「どうですか? 使いこなせるようになってきましたか?」

「……魔力をどうやって調整するのか分からなくてさ、本当に難しいな」


 俺に語りかける彼女の顔は、実に心配げなものになっていて。

 ちゃんと心配されている、気にかけられているというわずかな優越感を感じながらも、その裏に微妙なひっかかりを感じていた。


「でもそうだな。最近は思ったよりも……一気に使いやすさが増した気がする」

「あの。それは、でも」


 ここでエスペランサは言いよどむ。

 その理由はわかっていたが、まあそういうことなんだろうなと。


 ほんの数日前……というよりは、数十時間前に彼女とキスをしてからだ。

 そこで、俺と彼女の体液を少々交えたことが原因となっている、らしい。

 人間態であれ、神と交わったら少々のことであっても影響はでるということか。


「単刀直入に言えば、少しだけだと思いますが神と同化しはじめている、または神に近づいている可能性は確かにあると思うのです」

「……うん、それで?」


 俺の返答に対して、エスペランサは何かを言いかけようとしたようだが、すぐにそれも諦めたようである。

 その代り、こちらが心配になるほどの悲しい笑顔を見せて見せてきた。


「……シルバさんは、そういう方なので。それでいいと思いますよ」


 それでこそ、【希望神の英雄】ですねとすでに懐かしい単語ワードが聞こえ、俺ははっとなって額に手を当てる。

 もう、バンダナをつけるのも習慣になってきていた。

 彼女に選んでもらった二つを、今日も片方つけて生活している。


「最終的に、俺は何をすればいいんだ?」

「なんでもいいのですよ。……ただ、その神託がでたことは、この世に私がいるということのまた一つの証明となりえますので」


 証明っていわれても、っていう感じはするのだが。

 残念なことに、そこまで考えたことはないため俺は首をかしげるしかなかった。


 いったい、何を俺はやっていけばいいんだろう?

 まあ、エスペランサが道案内はしてくれるし、俺は提示された選択のなかから、一番いいと思われることをちゃんと選択するだけだ。


 今のところ、俺はエスペランサがそばにいてくれたらいいが。

 ……アンセリツティアとリンセルスフィアが結局どうなのか分からないが、最終的に俺側か、ラン・ロキアス側かどちらにつくのかちゃんと質問はするつもりだし。


「とりあえず、明日までエスペランサはお休み」

「……シルバさんは、どうするのですか?」

「俺も寝るけど」


 そういって、俺は椅子に腰かけたまま就寝についたのだった。

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