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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 鶴琉世乃
第9章:夏休暇【summer vacation】
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 目の前に、手の届く距離に彼女がいる。

 手の届くどころの話ではなく、実際に考えれば……ちょっと耳を澄ませるだけでも彼女の息が聞こえてきそうな、そんな距離に俺たちはいた。


「……なんだか、こうやって改まると恥ずかしいですね」


 彼女はそう呟くと、しかし右手を伸ばして俺の頬をそっとなでる。

 もっとも、それはなでるというよりは当てるだけのようにも感じられたが。


「これ。いいかんじですね」

「どういういみ?」

「……こうやって、私はシルバさんの体温を感じていられる。……シルバさんは……」

「俺は、エスペランサの息を感じていられるってか?」


 こくん、と頷いた少女に俺は微笑みかけると、また少女も微笑む。

 それが、また一つ彼女の魅力を感じさせる大きな要因となった。


「ねえ、シルバさん」

「ん?」


 その声は、耳に確実にはって侵入してくるような感じがする。

 猫なで声、とはいかないがていうか。

 おそらく精一杯色っぽい声を出そうとしたのだろう。


 ぞくっとした。悪い意味で。


「あぅ、大丈夫です?」

「すごい声だな、それ」


 俺の身体が震えたのが気になったのか、少ししょんぼりとした顔をするエスペランサ。

 そんな彼女を見つめながら、右手を動かして彼女の頭を抱き込む。


「……無理しなくていいから、自然体でいなよ」

「はい」


 しかし、彼女は俺の声ではなく、他の何かに反応したらしい。


「……交わりたいですか?」

「ん?」


 爆弾発言を、してくるではないか。

 交わりたいって。そういう意味だと思うんだが。


 エスペランサは、俺の手を握って頬を摺り寄せるようにする。


「私と、交わりたいですか?」

「……聞いてくるのか?」


 別に俺は肉欲にあふれているわけでも何でもないんだがなぁ。

 しかし、それでもちょっと待て。


 ……エスペランサが、体変えやがった。


「だって、私は人間態とはいえ神ですよ?」

「……それもそうだな」


 その前に、なぜ徐々に体が大人びていっているかの説明をしてほしいなぁ。


 しかし残念ながらその説明はなく、俺がちょうど希望神ホープとして彼女を見ていた、あの神殿の時のような容姿になる。


「だから、いいんですか? 人間が耐えられるとは思えません」

「俺は転生者だからな」


 転生者だし、神に力もらっているから大丈夫だろうという安易な考えだが。

 まあ、間違って位はいないようだし大丈夫だろう。


 彼女の唇に唇を重ね、すぐにはなす。


「んっ……」

「今日はこれだけでも」


 いい香りがする。

 どうも、エスペランサは俺の身体に異常がないか親愛なようで。


 だからこそ、ここまでしかできなかった。

 特に問題はないと思うんだけれどもね。


「大丈夫なんです?」

「何が?」

「……私との体液を交換したってことは、僅かながら神に近づいたってことなんですよ」


 神に近づく、か。

 そんなことも、まあ後々は考えていくべきことなのかもしれないけれども。


 俺がこの世界での人生の満喫後は、ヘーハイスの部下になることなんだからな。


「……特にないから、大丈夫だろ」


 今のところ、問題は何もない。

 だからこそ、こうやって調子づいていられる。


「何かありましたら報告してください」

「大丈夫だって」

「そういってられないかもしれないんです!」


 本気で心配してくれているようだが、まあ大丈夫だろう。

 涙目になってうるんでいる彼女をみながら、しかし我慢できなくなってもう一度唇を合わせる。


「決めたことは、なんでもやるさぁ」

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