177 露天風呂
糖分が少なめになってしまわれた。
「ふぅ」
彼女は、湯につかりながら幸せそうなため息をつく。
湯からは、白い湯気が霧となって立ち昇っている。
「良いお湯ですね」
「そうだな」
エスペランサは、俺が返事をするとまた一つ。
ため息をつくと、それは霧の中に混じって消えていった。
「もう少し、近づいてもいいですか?」
「どうぞ?」
こういうとき、どうやって話しかければいいのか分からなくなる。
エスペランサは、タオルを巻いているとはいえほぼ裸である。
それもそのはず、露天風呂なのだから。
というか、二人部屋にしては何もかもが大きすぎるのだ。
「このあとは、どうするんだ?」
俺の隣に移動した、エスペランサと一緒に夜空を見上げながら彼女にこれからの予定を聞くことにした。
「もちろん、同じお布団にくるまって寝ます」
「いやいや、そういう意味じゃなくて」
彼女は何を勘違いしたのか、露天風呂だけではなく寝る時も一緒にいようとしたのか聞く必要のないことまで口走っていた。
と、一瞬きょとんとした表情を浮かべた少女は、こちらを見つめて頭の上にハテナマークをくっつける。
「そういう意味じゃないのです?」
「いや、そういう意味でもあるけど。……本当は明日どうしようかなって」
なるほど、と頷きながらエスペランサは白いその両手で水をすくい、子供のように目をキラキラさせていた。
なんだか、まぶしく見えてしまうのは俺だけだろうか?
ああ、それは彼女の肌の輝きか。
「明日からどうする? 別に何日居てもいいけど」
常識の範囲内で、ということでいうのなら最高でもあと3週間くらいは時間がある。
ただ、そこまで一緒にいたとして何かするというわけでもないだろうけれども。
「そうですね。明日はここ【スズナリ】を回って、明日他の場所に行きませんか?」
「そうするか」
「わぁーい!」
そういって、少女エスペランサは大きく伸びをした。
ふわっと湯気は揺れ、彼女の露出した肩は一層白く感じられる。
それにしても、彼女は幼いのか大人びているのか微妙な存在だな。
普通に考えたら神様なんだし何でも知っているから上に見るんだろうけど。
こうも近くにいると、どうしても彼女が妹のようにも思えてしまうのだ。
「そろそろあがるのです?」
「おう」
そのまま寝てもよかったのだが、まだ時間を見ると午後10時。
まだ店は開いているだろうということで、泊まるときに食べる菓子類を買いに行くことにした。
この、東アジアを具材としてかき混ぜたサラダのような国は、スズナリ周辺こそこんな歴史を感じさせる場所だが、逆方向に向かうとポラリスよりも反映した大都市があるらしい。
「やっぱり、シルバさんはそちらに興味があるのですか?」
「ないわけないだろ」
こっちにも魔武具の材料はあるのだろうが、それでもあちらのほうも気になる。
スズナリが【腕獣族】の都なら、あちらは【械刃族】の都だろう。
生まれた時点から身体の半分以上が機械でできている、先天性のサイボーグである【械刃族】。
きっとその都は工業工業しているのだと考えれば、そう心が躍るのはわかるだろう?
「大気汚染とか酷そうです」
「そこは。この世界の魔導学が何とかしてるだろ」
なんとか、というのはいったい何なのか俺には分からないが。
まあ、特に考える必要はなさそうだ。
俺は魔武具を創る、魔法関係の人だからな。
自分の生計をちゃんとして、あとは大切な人数人と安全に暮らしていければいいような気もする。
放浪する必要もないんじゃないか、と考える時もある。
そもそも、俺はこの世界に転生してきて何をやろうとしているんだろう?
「何か考え事でも?」
「ん、いや大丈夫」
エスペランサが、籠の中に美味しそうだと思って購入予定の和菓子類を詰めてきた。
かなりの量があるし、どれもが名称も同じで前の世界で見たことのあるものだ。
不器用だな本当に、コピーするのなら完全にコピー世界を作ればよかったのに。
「全部?」
「はい」
……まだ食べるのか。しかもこんなに。
次回は添い寝回です。




