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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第9章:夏休暇【summer vacation】
165/333

165 3人目の転生者

「元婚約者、ということは一回解消されたのですね」

「ああ……恥ずかしい話ながら。二兎を追う者は一兎をも得ずってやつだ」

「……?」


 ……ああ、異世界ではさすがにことわざまでは無理か。

 ということで、俺はレオに「二つのものを得ようとしてどちらも失う」ということを説明する。


 確か、こんな意味でよかったはず。ちゃんと覚えていないから少々不安だが。


「ああ、そういうことだったのですね。それは異世界でのことわざ、なのです?」

「まあ、そういうことだな」

「……」


 俺がうなずくと、レオは何か思うことがあったらしく黙り込んでしまった。

 いったいどうしたんだろう?

 レオを心配して俺が手を伸ばすと、しかしレオはすぐに首を振って自分の無事を伝える。


「いえ、ちょっとですね」

「ん?」

「ええと、……同じ境遇同士、頑張りましょう?」


 その一つの言葉で、俺はすぐにその意味を察した。

 同じ境遇。つまり、この少女は俺やラン・ロキアス、リンセルやアンセルの先祖様と同じように転生者ということになるのだ。


「転生者なのか?」

「はい。……ええと、精神はそのままで体は乳児の時から遡りです」

「俺はどっちもそのままだ」


 どうも、このレオという少女。

 俺と違って、完全に転生してやってきたらしい。


そのため、俺のような新鮮さっていうかなんて言うか。

 この世界になじんでいるっていうか、そんな感じになっているという。


「これ、言いますけどクレインクイン様にも伝えていませんからね」

「なら、なぜ俺に?」

「先ほども言ったでしょう。……同じ境遇なのですから」


 彼女の言う同じ境遇というのは、転生してきてクインに認められるまでワンセットということだろうか。

 どうも、彼女の表情を見ている限りそのようだ。


「そういえば、シルバさんは護衛を蹴ったそうですね」

「そうだな」


 蹴った、というのは何も物理的な意味ではなく。

 就職の事だろうな。残念ながらそれは蹴った。


「なぜなんです?」

「さすがに聞いているだろう」

「……魔剣を、自由に創造できるんでしたっけ」


 いや、ちょっと違う。

 自由に、というのに語弊がある。


 別にいつでもどこでも好きな時に生み出せるのではなく、俺の能力は「材料がそろっていれば」の話。

 しかも、簡易だろうがなんだろうが作業台というものが必須になるため、正直急増で創るのなら【異能族サイコル】がよくやる、魔力を凝縮させて武器を生成するやり方のほうがいい。


 あと、魔剣だけではなく【魔武具まぶぐ】全般すべてということも、細かく違う点だろう。


 と頭の中では思ったのだが、さすがに事細かく説明するととんでもないことになりそうなため、取りあえずうなずくことにした。


「ということは、魔剣を作れば生計は立てられるのですね」

「十分すぎるほどには」


 正直、俺のつくった魔剣って無償で渡していない限りすべて億越えしている。

 金が云々かんぬん……というわけにはいかないが。


「あと、自由がない」

「自由ですか。……それは確かに」


 やっぱり、それには同意してくれるのか。


「そういえば、レオの能力はなんなんだ?」

「秘密です。……まだ、一回も使っていませんし」


 でも、何を与えられたかは知っていますとレオは微笑んだ。

 ということは、この人も神々の審査を通過したということか。


「しかし、奇遇ですね」

「まあ、そうだな」


 奇遇どころの話ではない。

 正直、どうなっているのか俺も戸惑っている。


「私が勧誘しても、来てくれないのですか?」

「いや、今のレオに発言力はないだろう」


 彼女が、転生者ではなくこの世界のひとりとして認識されているだけでは、彼女もあの……グレイクっていう護衛とかわらない。


 だから、俺は今彼女を「純混種族の護衛」としか見ていない。

 転生者は、彼女にとって未だアクセサリーでしかないのだ。


「逆に問おう」

「はい?」

「レオが【引金トリガー】になりえたとき、俺たちと来ないか?」

「それは、口説いているのです?」


 口説いている、か。

 確かに勧誘ではあるが、口説いているわけではないと思いたい。


 引き金。つまり、彼女が何かの拍子に【転生者】と判明したとき、彼女はこれからどうやって生きていくのかということだ。


「そうですね、考えてみます」

「おう」

「ただ、あまり期待はなさらぬよう。……私が何であれ、今はクレインクイン様の護衛ですので」


 ああ、この娘はガードがとても堅そうだ。

 ……突破できるのだろうか。……ちょっとだけ、心配にはなってきた。


「あ、こんなところに二人ともいたんですねっ」


 後ろのほうで声がし、振り向くとそこにはエスペランサ他2名の姿があった。

 その一瞬で、レオの翼は最初からそこに何もなかったかのような自然とした現象として「消え失せ」る。

 花が咲いて散る、そんな感覚を肌に感じながら俺は3人に向かって手を上げる。


「……さて、次はどこに行く?」

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