016 能力数値
「え?」
「説明するので」
エスペランサが説明をしてくれる。
ここの数値は個体のその分野における才能を数値化したものらしい。
それぞれの種族には、基本的に1から100までで示された数値のうちでの基準値があるという。
100を超えることは、ありえないということか。
「俺の膂力は、だいたいどのくらいなんだ?」
「そうですね、基本的に筋肉質で骨も丈夫な獣腕族でも加減を間違えたら骨折させそうです」
……バカにならない言葉が返ってきた。
獣腕族、とはたしか龍神の話によるともっともスタミナに優れている種族だ。
獣の耳がある、ということはエスペランサも獣腕族なのだろう。
それが折れると言うことは、それこそ酷いくらいに自分の力を制御しないといけなくなると言うこと。
力を制御できなければ、結局は宝の持ち腐れになってしまう。
「ほかにも魔力が龍眼族の基準値を飛び越えて知勉族よりもすこしだけ少ないくらいですかね、数値78。それ以外のは今のところ、龍眼族の基準値と大差ないようです」
確認してみたが、膂力が100を超えていた。実に108。
……エスペランサは驚きすぎて口調が一周し、逆に冷静になっているっぽかった。
「役所に後で行って、数値は非公開にした方がよろしいかと思われます。有名人でも、そこまで高い方はいません」
「そ、そうだな」
しかし、これを逆に公開することでほかの人を寄りつかせないという方法も取れるだろう。
この世界の仕組みが分かっていない俺は、そうエスペランサに提案する。
「何を考えているのですか。こんな規格外のものを晒していたら、四六時中決闘の申し込みが止みませんよ」
「決闘?」
「えっ、決闘を知らないのですか?」
……決闘って、あの……中世ヨーロッパで行われていた正式な殺し合いというイメージしかない。
もしくは、俺の一度目。前の人生で行われていたこれまた人を殺しかねない戦闘訓練のことか。
「あの、顔が少々青いですが大丈夫ですか?」
「ああ」
生前に自分がやっていたことを反芻していたら、思ったよりもリアルに思い出せて気分が悪くなった。
体感時間はすでに分からなくなっているが、転生してからまだ数日。
そうやって考えると、数日前に俺は腹を開けられたんだな。
勿論、それが俺にとっての致命傷なのだが。
「あの、シルバさん?」
「大丈夫だ。……早く商店へ行こう」
記憶を心の奥へと振り払い、俺は目の前の少女を見つめる。
……雪が降ってきた。徐々に白雪は地面に、白い絨毯を構成していく。
雪国のようなそんな雰囲気の小さな村。
それこそ村、集落とも言えないような場所で。
俺の二つ目の人生は始まるのだろうか。




