148 アミュレット
アンセルが彼女になった、ということで俺は先ほど、魔武具を一つ作った。
媒体をアンセルがくれた市販の安いネックレス、触媒を【サンストーン】と【ムーンストーン】っていう、高ランクそうで結構安いものを使ってみる。
ちなみにこの二つ、高質な魔力を大量に流し込むかいろいろすると、【ソルレイト】と【ルナライト】という高級触媒にすることもできる。
そもそも、上位の二つは地域によっては守り神の代わりになっていたりするんだけれど、とにかく今回使っているものはそこまでではない。
しかし、残念なことに今回は俺の魔力を使った。
その結果。
「あー、やっちゃった気がする」
【持ち主に対して負の感情を持った人からの、干渉を一切無効化する】というとんでもない魔武具ができてしまった。
「とりあえず、アンセルにこれを渡そう」
「初めて見ましたが、綺麗ですね。鍛冶? でしたっけ」
「や、【魔武具創造】だから鍛冶じゃないな」
今回は金属を使っていないからな。
触媒であれ、媒体であれ金属を使えばこの世界では「鍛冶」というらしい。
よくわからないけれども。
そもそも、鍛冶っていうのは日本で「金打ち」がなまってなったんだっけか。
いや、うろ覚えだから違うかもしれない。
そもそも日本人じゃないから、知っている方がおかしいのかもしれないな。
「ところでこれはなんです?」
「【干渉護符】」
「効果は?」
「【持ち主に対して負の感情を持った人からの、干渉を一切無効化する】」
「……ちょちょ、ちょっと待ってください」
アンセルがあからさまに、慌てた。
これが物理的にも効用があるのか分からないが、これで彼女に対し劣情を持った人の干渉をすべて受け付けなくなってくれるとありがたい。
「でも、これって。万が一シルバさんが私に……そういうことを思ったら」
「うん、たぶん干渉できなくなる」
「んー。シルバさん、改良版でシルバさんを対象から外してくださいね!」
元気いっぱいに言ってくれた。
あら、俺って信頼されてる?
しかし、今の間はさすがに彼女には首にかけてもらおう。
似合ってるな。
「紫色なんですね」
「時間によって変わるようにした。朝に近いと赤へ、夜だと青に変わる」
「なるほど」
ちなみに、隣にいるエスペランサに渡そうとしたらそのまま「いらない」と返された。
やっぱり必要ないらしい。
「効力さえなければ、普通にアクセサリーにいいのですけれど」
「わかった、普通にアクセサリー作る」
さすがに、魔武具しか作れないため何かの効力はつけるべき。というかつけないと作成できないというへんなデメリットがついている。
「アクセサリー度合いを……と思ったが、その色変化がすでに魔法なんだよな」
「なるほど。効果は違いますが、お揃いというわけですね」
アンセルは実に嬉しそうだ。
そんな彼女を見てつられたのか、エスペランサも微笑む。
「アンセル、すまないが一回はずしてくれ」
「はい」
「作り直す」
このくらいの回収なら、もんだいない。
持ち主に俺も登録してしまえばいいだけだからな。そうすれば行ける。
……や、でも一応俺を対象から外すために、作成者を対象から除外すればいいのか。
「エスペランサさんエスペランサさん」
「はい?」
「シルバさんは転生者ですが、エスペランサさんは謎法族じゃないですよね?」
俺が作業に取り掛かろうとすると、後ろからそんな会話が繰り広げられており、手を思わず止めてしまう。
……アンセルも、親に負けず劣らず良い「眼」を持っているな、今確信した。
「……レイカー家、おそろしや。です」
「ふふふ」
ここでエスペランサの声が、本気で怖がっている声というのが一番印象に残った。
……すごいなぁやっぱり。
護符なのにネックレスとはこれいかに。