014 状況説明
「……初めまして。私がエスペランサの父であるエパアルだ」
「シルバと申します」
俺が一礼するとエペ父は安堵したように息をつき、俺の正面でエスペランサの隣に座る。
その態度から警戒心がある程度ほぐれたのを感じるに、俺という……いや。
龍眼族という存在を目の当たりにして戸惑っていたという印象を受けるが。
「……ではシルバ君。今回何故エスペランサと一緒にいたのか、説明してくれるかな」
「え」
俺は正直戸惑った。
あの状況説明するとなると、十中八九俺は「エスペランサが少年3人に追いつめられている」という言い難いものになってしまう。
どうすればいいのか。俺は斜め前にいるエスペランサに目配せをしたが、エスペランサは困ったように首を感じられるかの微妙な動きでふるふるっと振っただけだった。
というわけで、俺はでっち上げることにした。
「暴漢にエスペランサが襲われていたから、助けただけだ」
「そうか。……最近はこの辺も治安が悪くなりつつある。……信じることにしよう」
どうやら、でっち上げたはずの事は結構あり得る話だったらしい。
俺はこの場を逃れたなら、その暴漢たちも叩き潰そうと決めた。
既成事実というものを作成しておかなければ。
「……ここからどこかに行くという予定はあるのか?」
なんだこの、ゲームでよく言う勇者みたいな扱いは。
ちなみにここがどこか分からない。
村の正式な入り口ではないようなところから……雪原の方から飛んできているものな。
「特にない」
「そうか、それならエペを救ってくれた礼だ。ここで寝泊まりするといいだろう。……失礼だとは思うが、金はなさそうに見える」
巨大な熊:ノーザンベアーの毛皮は持っているけどな。
そばに商店があったら、そこに売り払うのも手だと思った。
まあ、エスペランサに迷惑をかける事にはなるだろうが。
「分からないことがあったら、エペに聞いてくれ。エペ、シルバ君をゲストルームへ連れて行ってくれないか?」
「はい」
エスペランサが立ち上がったのを見て俺も立ち上がる。
俺はエペ父に一礼をし、クスッと笑ったエスペランサの後ろをついて行った。
「一礼だなんて、しなくても良かったのに」
「でも、礼は必要だろう」
「別に、結婚の話をしてきたわけではないのですから」
……この世界、前いた世界とは文化が違うのか。
いや、俺が東洋の文化に毒されてきているのか。
……でも、礼儀が大切だというのは万国共通だとおもっていたのだが。
「何か、お困りになっていることなどはございませんか?」
「……そうだな……」
俺は、窓の外から商店らしき建物を見やり、看板を探す。
特に普通の商店。看板はやはり読め……。
……る……だと……?
「どうなされましたか?」
「……あの商店、万屋って書いてあるのか?」
「ええ。この村唯一のお店で、自由に売り買いが可能ですよ? どういたしましたか?」
発見。
この世界の文字は、少々崩れているものの。
……英語でも何でもなく、日本語である。




