134 圧力
夜に更新できたらもう一回します。
しかし、咳が止まらなくてキーボード打ちがずれるんですよね……。
俺の魔武具に確かな期待を抱き、少々スキップ気味に医務室へ向かう彼女を、俺とエスペランサはあとをついていくことにした。
それはいいんだが、リンセルと並んでいる中世的な少女の存在が気になる。
たぶん、この子がリンセルの言っていたクリーゼっていう子だな。
一目見るだけなら、美少年と判断してもおかしくないほど凛々しい。
服装もボーイッシュだけれど、クレインクインは隠しきれない女性っぽさがあった。
だから官能的なんだが、この少女は完全に女性という特徴を隠しきれている。
ちなみに、個人的には好きじゃないタイプの人間だ。
「で、後ろにいるのは有名なシルバ・エクアトゥールだね」
唐突に俺たちのほうを向き、少女はにかっと少年的な笑みを見せる。
ホットパンツからは健康的な太ももが惜しげもなくさらされているが、彼女が気にした様子はない。
胸はない。ここ大事。
「魔剣鍛冶師、かぁ。本当に作れるの?」
「リンセルが持ってるそれが証明だ」
俺がそっけなく返すと、クリーゼは「へえ」といった顔をしてリンセルの手の中にあるハープを見つめた。
虹色に輝くそれは、少々ながらも彼女の興味をそちらに引き寄せることができたらしい。
ていうか今まで気づかなかったのか。それとも俺が作ったものだと思っていなかったのか。
「龍眼族は、魔剣しかつくれないって聞いてるけど。……これ、魔剣じゃないよね?」
ああ、これはどうしようか。
どうも、興味が俺からエスペランサへ移っているらしいし、俺は何もしなくていいような気がする。
クリーゼなんちゃらは、俺ではなくエスペランサがこの【平穏】を作っていると思ったようだな。
エスペランサも、恐らく俺よりももっと簡単な方法で創る。生成するだろうな。
「シルバさんが何を勘違いしているのか分かりませんが、私にそんな能力はありませんよ」
「ということは、謙遜でも何でもなくこの龍眼族が作ったんだ」
さっきそういったはずなんだけどな。
この女は何が言いたいのか、何がしたいのか。
さっぱり意味が分からない。
「自己紹介だけする。僕はクリーゼ・シックザール」
クリーゼなんとかさんは、そういって俺を睨み付けるとふんと後ろを向く。
訳も分からず俺とエスペランサで視線を交叉させていると、リンセルがいったん後ろに下がって申し訳なさそうな顔をしていた。
「……あのね」
「いいっていいって」
相手がこちらに敵意を示すなら、こちらから無理に好意で近づく必要もないしな。
これから3年間、この同じ学園で暮らしていくときに面倒になりそうなのはあちらだけどな。
「ところでランは? この時にも来ないのか?」
「残念ながら。……でも、年末のほうが大切みたいだね」
ラン・ロキアスがクズに見えてきたのは俺だけだろうか。
彼女が目覚めるかもしれないなんていう一大事に、訓練をやめて様子を見に来ようとも思わないのか。
この調子じゃ、その男に心酔している女性もそんなにいい人ではなさそうだ。
「まあ、一番俺が得しているのは」
「どうしたの?」
リンセルは、俺を見て不安げ。
エスペランサも俺を見て不安げに首をかしげているあたり、どうも顔は驚くほどゆがんでいたようだ。
クリーゼなんとかさんは、こちらを見てふんと鼻で笑った。
「一番得しているのは、俺に権力の圧力がかからないことだな」
神からもらった能力。
正直、もらったのはかなり都合のいい話だ。
そもそも、エスペランサに救われて第二の人生を歩めたのも都合が良すぎる話だろう。
世界中で死んだ人の中、何人が転生できるんだろうか。
俺にはそんな統計の取りようもないし、とろうとも思わないけれども確率は低いはずだ。
チート能力、なんて自分でも思うけれど。
俺の【引斥制御】は生前から似たような能力を持っていた。
だから、特に気にすることはない。
【魔武具創造】? これのおかげで俺は材料さえあれば金にも困らなくなった。
俺を雇おうとする女性はいるし、そんなクレインクインは本気で俺を手に入れたがっている。
「なんか、怖いです」
「エスペランサちゃん、同感だよぉ」
少女二人の声で、思案中の脳味噌から意識を外へと引きずり出される。
周りを見回すと、少々怯えつつ心配そうな二人の美少女となぜか不機嫌な少女一人。
「……ああ、すまん」
説教系の能力を持っていればよかったのに、とか一瞬思ってしまったが、あの時希望神に頼まなかったのがもともとの敗因である。
あとは俺の動き次第だな。何とかしよう。




