114 城
2話かけたら更新します。
「ここが、私の家だ」
夕方。
昼前に待ち合わせの場所へ終結した俺たちは、そのままレイカー家当主のルークエルリダスさんが用意していた大型の【デルエクス】に乗って数時間移動。
少女クレインクインとのお茶もなかなかだったが、h護衛の視線もあり、どうじにエスペランサの事や俺のこのあとのことも考えながら受け答えをした結果、ありきたりな話になってた。
「家?」
家というよりは、どう見ても城なんだが俺は幻覚を見ているのだろうか。
目測だが、大きさだけで考えたらクレアシモニー学園よりも巨大なのかもしれない。
これが、権力の体現か。
「ん、家だが」
「……さすがに広すぎる……」
王都の城を、そういえば俺は見ていなかったな。
いや、遠目には見たんだが直接には見ていないというか。
でも、圧倒的に王城と違うのは、あちらが一面の白なのに対してこちらは氷色だということくらいだろうか。
「綺麗な城……」
二人の先輩方も、まるで幻想的なものを見つめるような目で「それ」を見つめている。
確かにきれいだ。思ったことをそのまま口に出してしまう、無意識にそれをやってしまう程度には美しい光景だったということ。
そんな状態の俺たちを、笑顔で見つめているルークエルリダスさんは門を開けて「ついておいで」と手招きする。
我に返り、後を追うとそこに広がるのは草原と、整地された一本道だった。
この城自体は山の麓にあるんだが、それと同化するように、景観を崩さないようにしつつ城の美しさも際立っているような気がする。
「とりあえず、中を案内するよ」
「おじゃまします」
本格的なメイド、初めて見た。
しかも理想の、なんというかメイド服の姿で。
実際、俺は日本にいたころそのなんていえばいいんだ、コスチュームプレイとでもいうのだろうか、それでしかメイドの姿は見たことがない。
ていうか若い女の人多いな。
異世界ってすごい。
「数日泊まっていくといい。……案内は頼む」
ルークエルリダスさんは、そういうと先輩方とエスペランサに席を外させた。
どうも、俺と話をしたいらしいな。
「すわりなさい。あと、そんなに気張らなくてもいい」
レイカー家現代当主は、俺を落ち着かせるようにそう呟くと椅子に座りこんだ。
ここはルークエルリダスさんの書斎、だろうか。
思ったよりも簡素なつくりをしている中に、壁を覆い尽くすほど多くの本。
「……まず、お礼をさせてほしい。娘二人を救ってくれて、ありがとう」
「あれは……」
あれは、俺が私情でもともと彼女たちを救おうとしたランを叩き潰しただけだからな。
何とも言えない。正直、俺は暇つぶしのような、それとも偽善かのあいまいな気持ちで救っただけだ。
そんな俺よりも、ラン・ロキアスのほうが何か信念を持っていたに違いない。
今となっては後の祭りだが。
「そこで一つ、頼みたいことがあるんだ」
「?」
「……うちの二人の娘を、どうかもらってくれないか?」
いきなり話が飛躍しすぎて、俺は口を無意識の間にあんぐりと開けていた。
目の前の、精悍なイメージを俺に与えてくる、落ち着いた物腰の中年男性は、しかし至極真面目な顔で俺を見つめている。
「あー、さすがにお断りします」
「なぜ?」
確かに、権力をというか「力」というものを勝ち取るには一番手っ取り早い。
この国の事はよくわかっていないが、レイカー家は「準王族」という分類に入るらしく、簡単に説明すれば王族の次にえらいということなのだろう。
でも、俺は権力のために好きでもない女の子と結婚するつもりはない。
「まだ、やるべきことがありますし。……リンセルスフィアさんとアンセリツティアさんには、大切な人がいますしね」
俺がそう呟くと、相手はこちらを見て「ふむ?」と興味深そうな視線を向けてくる。
「それはいったい誰なんだ?」
「……ええと、なんといえばいいのやら」
俺と同じ転生者で。
でも、「地球」という同じ星に生まれつきながらも俺とは違う世界で。
平和ボケした和の国で、頭までぼけてきたのかと考えてしまう程度には単純すぎる男の名前。
「……ラン・ロキアス」
あの男は、正直言って化ける可能性が十分にある男だ。 思ったよりも順応性が高いし。センスも悪くない。