011 推測
三日三晩さまよった結果、ついに俺は雪原から抜け出した。
やってられなかった。しかし、目の前に木が生えたときの感動というものは、この世界にきて初めて喜んだ瞬間だろう。
巨大な熊を殺したのは自分が生き残るためであり、殺したときには達成感もなにも感情はわかなかった。
女神イデアから『知恵』という道具をもらった時も、そこまで喜ぶことはなかった。
雪原で一生を暮らしていく気はないからだ。実際、左右の『アルミリア』は確かに役に立っている。白いほうは生物の正式名称などの情報を俺に与えてくれ、黒いほうは……未だに機能した覚えはない。
「言語はどうなってるんだ」
遙か遠くに、確かな人影を視認して俺はつぶやいた。
イデアたちは神だ。もちろん、どんな言語でも理解し、その言語で話しかけることはできるのだろう。
しかし、俺はあくまでも人だ。いくら神々に体を再構築されて最強の種族を得ても、記憶がなくなっていない限り脳まで再構築されたというわけではないだろう……。
とも思ったのだが、よくよく考えてみれば【引斥制御】の使用方法を記憶の中に埋め込まれているため、言語も適応されていると判断。
人影に向かって歩いていったのだが、どうも様子がおかしい。
少年が三人に少女が一人。
しかし、どうも様子がおかしい。
何度も言うが、どうも様子がおかしい。
少年の方が、少女を壁に追いつめているような構図になっているのだ。
なんだか、どうなっているのかいまいち良くわからない。
「とりあえず……」
今の俺とは関係のないことだが、こんな場所を見逃すほど俺も人は悪くないつもりだ。
同時に、だからといって無償で助けるほどお人好しでもないのだが。
助けることにメリットは見いだせなさそうだが、この世界の少年の一般的な戦闘能力を測るのには便利そうな状況である。
であるからにして、好戦的にいかない理由は見あたらない。
だから、叩こう。
「よっこらせっ」
俺は少年たちが少女を追いつめている家屋の壁を指定し、そこに向かって【引斥制御】を発動。
数秒とたたないうちに、数百メートルはあった距離が一気に縮まる。
『展開』
……なるほど、名前はアルフ、アリベ、イルダ……か。
この腕輪、その性能が優秀すぎて相手のプライバシーにも踏み込めるのは、果たしてどうなのか。
俺はそんな小さなことには目を背け、唖然としている3人の少年と……うずくまって何もいわない少女を見下ろし。
「……楽しそうだな。俺も混ぜろよ」
と、十中八九悪いと思われる顔を浮かべながらそう言ったのだった。




