108 ルークエルリダス
「ここが、アリアか」
カエシウス聖王国の王都、アリア。
俺たちがクレアシモニー学園から出発して、約2週間が過ぎた。
結局あの後、エスペランサは先輩方に明確な答えを要求しなかったし、そもそも二人は微妙な距離感を保ったまま、それでもついてきていた。
それっきり、エスペランサと先輩方は会話を交わしたことがない。
エスペランサは先輩方をどうおもっているのだろうか。
正直、不要だと思っていても全くおかしくないんだが……。
「シルバさん、今日はどこに泊まりましょうか」
そんなことを言いながら、彼女は俺のほうをむくと愛嬌たっぷりの顔で笑って見せた。
その顔を見ているだけで、浄化されそうな気がするが気のせいではないと思いたい。
「そうだな。……先に宿をとってからにするか」
さすがに王都だ、魔剣の鍛冶屋くらいはあるだろう。
そんなことを考えながら、俺はエスペランサの後を追って4人分2部屋の宿をとりにいくことにした。
「シルバ」
「どうした? ヴァーユ先輩」
後ろから話しかけられ、振り向くとそこにいたのは赤く頬を染めた先輩。
顔が赤いのは、熱があるからなのかそれとも別の意味でなのか。
いや、カエシウス聖王国出身のことだから前者はありえない。
「……シルバ、うしろ」
うしろ?
首を傾けつつ、もう一度前を向くと。
そこには、一人の男が立っていた。
「初めまして、シルバ・エクアトゥール」
「……?」
誰だこの人。
しかし、俺が質問をする前に先に口が動いたのは相手のほう。
「私の名前はルークエルリダス・フレイヤ・レイカー」
……そこから先は、俺でも予想がついた。
この人が。
「レイカー家の現当主だ、よろしく」
「まさか本当に交通手段なしで来るとは思わなかった。……さすが龍眼族、ということか?」
ここは、王都の中心部にある酒場だ。
だといっても、別に豪華な雰囲気はなくファンタジー世界によくあるアレだ。
この世界が、そもそもファンタジー世界というのもあるが、なかなか。
というより、この世界にも酒というものは存在するのか。
先輩方は最初に会ったとき、緊張でヴァーユ先輩が失神しかけたためここには連れてきていない。
代わりに、いるのがエスペランサ。
「で、この娘はなんなんだ?」
「俺の相棒です」
「エスペランサ・ホープレイと申します。種族は謎法族」
なかなか、珍しいコンビだなとルークエルリダスさん。
ちなみに、あの双子姉妹と同じように髪の毛は銀髪で、男にしては長い。
目の色は夜空を覗き込んだような藍色で、星が煌めいたようにきらきらと少年のような輝きを失っていない。
この人、何歳なんだろうか。見たところ20後半のような気もするのだが。
「ホープ、か」
と、急にレイカー家当主は意味深な顔をして見せた。
もしかして、気づかれたかもしれない。
「確認のために聞くが、君は【希望神の英雄】に認定されたんだな?」
「えっ」
なぜ、そのことを知っているのか。
俺は疑問に思ったが、図星を指されて言葉に詰まったことで完全にばれてしまう。
「龍眼族はバンダナをするのは普通はない。……あるとしたら、額に何か隠したいときだけだ」
この人は、たぶん洞察力が人並ではないのだろう。
それどころか、人レベルを軽く超越しているような気もする。
「さらに言えば、龍眼族にエクアトゥール姓は存在しないため、この世界の人間でもないことは分かった」
……この人、龍眼族にパイプがあるのか……?
だんだん、この人が人間に見えなくなってきた。
出会ってまだ数時間だ。そのあいだに、この人は俺たちのどこまでを推理したのだろうか。
「転生者か。……それなら君の魔剣技術もうなずける」
思いっきり全部ばれているな。
……ここは、俺はどうすればいいんだろう。
で、とルークエルリダスさんは次にエスペランサを指出した。
「希望神ホープ様ですね」
「……なぜです?」
今、確実にエスペランサの顔が引き攣った。
震えながら、理由を問うたエスペランサに、彼は柔らかい笑顔を見せた。
「謎法族というのは、本来自分の種族を隠すものです。ほとんど信用できる人にしか教えません。次にシルバ君が【希望神の英雄】の紋章を持っているということは、すごく近い位置に希望神がいるということ。……さらに露骨に古代の言葉でエスペランサは希望ですし、姓にも露骨な形で希望を持ち出されると」
古代の言葉になっているのか。この世界では。
よくわからないが、そういうことにしておこう。
このひと、エスパーか?
「エスパーではないな。わかることだけ」
エスパーだ……。
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