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龍眼族の異世界魔剣鍛冶  作者: 天御夜 釉
第6章:試練の旅【Travel of trials】
100/333

100 納得

今日の夜に101話更新。特別篇(?)

 ヴァーユ先輩は、意外にもすぐに1日の休暇許可を俺たちにくれた。

 おそらく、この旅はもともと俺が中心となって言っているものだということを、きちんと理解しての返答だろうが。


「というわけで、俺はエスペランサといってくる」

「えっ」


 だが、俺がエスペランサと町を回るといった瞬間、先輩方の表情は急にすぐれないものになった。

 いや、原因は俺だっていうことくらいわかっているのだが。

 それでも、なんで俺だけがこうなってしまうのか、という部分で俺もあまりいい気がしない。


「むぅ」


 アイライーリス先輩も、ぶぅと頬を膨らませているあたり納得のいかない様子。

 しかしなぁ、と俺は自分の状況を見返してため息をついた。


 確かに、俺がアイライーリス先輩に魔剣を作って、同時にヴァーユウリンス先輩を救い出したのは事実だ。

 彼女たちが、俺に対してなんやらわからない好意を抱いているのもわかっているし、俺だってどうせなら付き合いたいと思う。


 しかし、時期が時期なのだ。

 今は試験の旅の途中で。

 本当は俺とエスペランサだけでもよかったのに。


 エスペランサの名前を使って、ほいほい釣られてきたのは先輩たちなんだから。

 確かに、引き合いに出したのは悪かったかもしれないけれど。


「……シルバさん」


 これは、俺とエスペランサだけが、『エスペランサ=希望神ホープ』という方程式を知っているからだろう。

 全員に知らせていたら、みんな文句は言わないはずなんだけれど。


「シルバさん。……4人でいきましょ、ね?」


 ほら、こうやってエスペランサが悲しそうな顔をするからあまりこんな、修羅場的なことはしたくなかったんだが。


「……もう一回訊くが、エスペランサ・ホープレイとシルバはどういう関係なんだ」


 これは、ヴァーユ先輩は通してくれないようだな。

 さて、いったいどうするか。

 最悪、エスペランサに権能を使ってもらうというのも考えた方がいいのかもしれないし、ここですべてを白状してしまうか?


 でも、白状したら白状したでいいようには進まない気がするんだ。

 まだ、その時ではないと俺の本能がそう告げている。


「ただの旅」

「その言い訳はもう飽きた」


 やっぱり飽きていたか。

 しかし、でもなぁ。


「そもそも、エクアトゥールの家名なんて、今まで聞いたことがないぞ」

「……そりゃあ、別世か、じゃなくて田舎出身だから」

「田舎出身で、魔剣は作れないはずだぞ。このご時世、魔法に秀でている家が上にいくんだからな」


 ああ、……この世界も血統主義なのか。


「……この世界も、やっぱり魔法は遺伝するのか」

「この世界も? ……まあ、魔法の技術は遺伝するし魔力を蓄えられる数も遺伝するな、ほとんどのばあい」


 前の世界は、魔法ではなく「属性能力」ってよばれる超能力と異能力の中間のような力だったけれど。

 この世界と同じように、強い家系が上に行っていたのは間違っていない。


「突然変異、ということもあるじゃないですか」


 と、エスペランサが俺に助け舟をだしてくれた。

 ほう、この世界には突然変異なんて言う言葉が存在するのか。


 この世界の遺伝関係がどうなっているかわからないけど、やっぱりどこか間違えて とんでもなく強くなる子供とかいるんだろうな。

かといっても、俺は前世ではその『突然変異』みたいな一種なわけだったんだが。


謎法族カラミタな訳もあるないだろう」

「魔力が、ほかの人よりも種族の中で秀でるということは結構あると思いますよ」

「ぐっ」


 さすがエスペランサ、この世界の事はほぼ何でも知っているこの世界の希望神、である。

 知識最強は、間違いなくエスペランサだろう。


「そもそも、私が謎法族カラミタなのですから」

「えっ」


 そもそも、謎法族カラミタっていったいなんなんだ?

 俺はよくわからなかったため。一応ここではスルーすることにする。


 この世界では基本となる6種族が人口の約80%を占めており、次いで多いのがほぼ閉鎖的な空間で技術を蓄えている俺以外の龍眼族レザール

 確か、今はすでにいないが上位種もいるらしいし、別に俺が知らないものもあるということだろうか。


 あってもおかしくはないんだけどな。


龍眼族レザール謎法族カラミタのコンビということか」

「……そうですね、他は今まで言ったとおりですよ。世界をとはいいませんが、旅仲間です」


 実際、エスペランサはそれ以上なんだけどな。

 神だし。なんだかんだ。


 そうだよ。

 ひざまくらとか色々してくれるから、たまに忘れそうになるけど彼女神だよ。


「ほぅほぅ」


 納得するのか……。

 謎法族カラミタ、聞けば聞くほど実際謎の深まっていきそうな種族だな。


「……仕方ない」

「ありがとうございます」


 にこっ、と俺を振り向くエスペランサ。

 あきらめたように顔を見合わせる二人の先輩を傍目に、彼女は俺の手を取ると、その場から離れようと引っ張り始めたのだった。









 先輩たちの姿が完全に見えなくなってから、エスペランサは俺のほうに向き直って手を名残そうにしながら離す。

 が、俺は離れようとした彼女の手を、強く握りしめることによって彼女を逃れなくした。


 結果、嬉しそうな顔をされたんだが。


「なあ、謎法族カラミタってなんだ?」

「簡単に言えば、先ほど言ったとおり突然変異種ですよ。どの種族からも、超低確率で生まれる、魔力を数百人分蓄えられる……。いわば魔人族、といえば想像はしやすいでしょうか?」

「俺のイメージと、エスペランサのイメージが一緒だったらな」


「まあ、普通は生まれないですし、ほかの種族とは強さがいろいろと桁違いなので、忌み嫌われたりとか逆に崇拝されたりしますけれどもね」


 私は本当の話をすれば、種族を持たないので自分を偽るには一番いいです、と彼女は笑った。


「そういえば、種族の話もよくしていないのでしたっけ?」

「誰かにしてもらった感じはするけれども。俺の知っているのは7種族だけだな」


 そうですか、では今度の時期にと、エスペランサ。


 さ、今はデートを楽しもう。

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