010 腕輪
「そんなに警戒しなくてもよろしいのですよ? 私は貴方に試練を与えに来たわけではなく、今回は転生会議に参加できないことへのお詫び及び、それについての品を持ってきただけです」
と、目の前の少女は言った。
それにしても人間離れした美しい容姿だ。女神だから仕方ないだろうが。
それにしても、転生会議ねぇ。
あれを会議というのか、ただの交渉場所のような気がするけど、どうなんだろうか。
「ヘーハイスとアグルスに好きなように身体を改造されて、どこか不満なところはございませんか?」
「……特にないです」
力に代償があるのはどこの世界でもあることだからな。
龍眼族というおそらくこの世界『アルカイダス』最強の種族はもらっているのだし、いちいち気にすることもないというか。
俺が首を振るのを確認すると、女神イデア微笑んで。
懐から何かを取り出した。
「……腕輪?」
「今さっき。知識が必要だと願いませんでしたか?」
一瞬のけぞりそうになったが、相手が女神だということに気がついて何とかそれは回避できた。
俺の思考を読みとることくらいは容易なのだろう。
差し出されたのは白と黒の腕輪だった。
リストバンドほどの大きさで、それぞれ右手と左手に装着すると手にフィットするように固定される。
「……っ!?」
「心配なさらずとも、問題はありません。白い方を『アルバ・アルミリア』、黒い方を『ニーガ・アルミリア』と呼びます。」
任意ですので、展開と心の中で唱えてください、とイデアは言った。
その通りにすると、目の前に半透明のディスプレイのようなものが広がった。
大きさはタブレット端末程度だろうか。視界を遮るほど大きいというわけではなく、逆にあってもなくても変わらないほど小さいわけでもない。
「……なにこれ?」
「今はなにもありませんか。とにかく、それを装着したまま色々な場面で展開を繰り返してください。あなたがこの世界で生きるための知識を与えてくれるでしょう。では」
キラキラ、と女神イデアは輝いたかと思うと、次の瞬間には居なくなっていた。
俺はしばしの間、放心したように突っ立ってそのあと我に返る。
そして両腕に二つの腕輪があることを確認し、今さっき起こったことが夢でも何でもない、現実だと言うことを認識して。
「結局、どっちにいったらこの雪原から抜け出せるのか、聞くの忘れた。……知識をもらっても、現状把握をするのを忘れてるじゃないか……」
と、しても意味のない後悔をすることになってしまったのだった。




