寿司
「傘」の4人です。
例によってサッカー部です。
一郎「俺達は今回転寿司に来ている」
たける「といっても、訳もなく贅沢しに来た訳ではない」
啓太「試合の打ち上げである」
後輩「あの…先輩、誰に話してんですか」
啓太「なにって解説に決まってんだろ。読者に向けての」
一郎「この小説ほとんど文章ないから俺達が解説しないと」
後輩「ああ、ほとんどっていうか全くないですもんね。もはや小説じゃないですからね。詐欺ですからね」
一郎「いや誰もそこまで言ってねーよ。お前って結構ひでえな」
啓太「いいから食おうぜ」
たける「まあ、たまには寿司もいいよな」
後輩「あ、ウニきた」
啓太「マジだ。おいたける、ウニ取って」
たける「なんで俺が」
啓太「近いじゃん」
たける「苦労してでも自分で取れよ」
啓太「お前が邪魔で取れねーんだよ!あー、どけ!」ぐぐぐ
たける「」ぐぐぐ
啓太「無表情で押し返してくるなよ!ウニいっちゃったじゃん…」
一郎「たける何やってんの…」
たける「悪かった」
啓太「謝ったっておせーよ!もうウニは戻ってこないんだからな!
どうせ一周してくる間にあの辺の家族連れに取られる運命なんだよ、ウニは!」
たける「」スッ
啓太「え…?これは、ウニ……?」
たける「ああ。正真正銘、一皿420円の高級ウニだ」
啓太「たける…何でお前そんな、さっきとはまるで格が違うウニを持ってんだよ」
たける「なに、簡単なことさ。お前がウニを好きだと言っていたから店に入って一番に、板前さんに注文しておいたのさ」
啓太「た、たける……!」
たける「さあ、食え!モタモタしてる暇はないぞ!なんたって回転寿司だからな!」
啓太「ああ、旨い!恩にきるぜ」もぐもぐ
一郎「何なのコイツら」
後輩「放っておきましょう。あ、一郎先輩、イクラ取ってください」
一郎「えー、何で俺が」
後輩「何でって、近いじゃないですか」
一郎「自分で苦労して取った寿司は旨いぞ」
後輩「いやアンタが邪魔で取れな……ハッ!もしかしてこのパターンは!」
一郎「ごめん、後輩」
後輩「えっ?」
一郎「俺、そういうのないから」
後輩「マジかよチクショウ!結局イクラ取り逃がしただけだった!」
たける「ほら、後輩」コトッ
後輩「え……コレ…!たける先輩…!」
たける「ああ…注文しておいたぞ」
後輩「わあ アンタは神ですか!ありがとうございます!」もぐもぐ
一郎「あの、たける」
たける「ん?」
一郎「俺…うなぎが好きなんだけど…」
たける「へえ」
一郎「へえじゃなくて…何か…無いの?」
たける「何が?」
一郎「いやだから…」
啓太「ダメだぞ、一郎」もぐもぐ
一郎「え?」
啓太「たけるは心の汚い人間には反応しないんだ」もぐもぐ
一郎「マジで?俺、啓太より心汚えの?」
後輩「一郎先輩、うなぎは諦めて、コレでも食べてて下さい」コトッ
一郎「……ガリじゃん…」
啓太「ぶっww」
一郎「俺コイツらより心汚えとかねえよ!絶対俺の方が純情ハートだよ!」
たける「一郎、落ち着け。ほら食べろ」コトッ
一郎「……!たける………って、あれ?コレ、うなぎじゃなくね?」
たける「すまん、うなぎはこの店に無かったんだ。あなごで諦めてくれ」
一郎「…あ、まあ……うん、ありがと…。つーかコレ絶対、今回転してるやつから取ったよね」
啓太「文句言うなよ。わざわざ取ってくれたんだから」
後輩「そうですよ」
一郎「いや、まあ、いいけどね、食うけどね」もぐもぐ
たける「」カチャッ
啓太「たける、何取ったの?」
たける「玉子」
一郎「……マジで?」
たける「知ってたか?この“さびぬき”の旗をレジに持っていくと風船をひとつもらえるんだ」
後輩「風船もらう気だよたける先輩…」
たける「風船といってもアレだぞ、ちゃんとヘリウムガスで浮くやつだぞ」
啓太「いくつになっても浮く風船は欲しいよな」
たける「だよな!」もぐもぐ
一郎「そういうもんなんだ…」
たける「」カチャッ
啓太「たける、今度は何取ったの?」
たける「玉子」
一郎「………あの、たける、もしかして玉子好き?」
たける「ああ。大好物だが?」
一郎「だが?じゃないよ!おかしいだろ!高三男子が回転寿司で玉子ばっかバクバク食いやがって!お子様か!」
たける「別に玉子ばっかり食べてた訳じゃない」
一郎「マジで?じゃあ聞くけど他に何食べた?」
たける「えんがわ」
一郎「微妙!」
後輩「ちょっと啓太先輩、そんな高い皿ばっかり取らないでください」
啓太「はあ?何でだよ。貧乏くさい奴だな」
後輩「いやいやワリカンの時に割が合いませんよ」
啓太「……仕方ねーな」カチャッ
後輩「そうそう、無難に下から二番目あたりの皿を取っていけばいいんですよ」
啓太「つーか一郎、さっきから全然食ってないじゃん。腹でもいてーの?」
一郎「いや、そんなことない。ただ好きなのがこないだけ」
後輩「一郎先輩が好きなネタって、何ですか?うなぎ以外で」
一郎「えーと…サバ、ナマズ、アジ、あとは光り物…」
たける「何だ、人の事言えないくらい微妙じゃないか」
啓太「本当だな。回ってこないのも仕方ねーよ。俺が選んでやる」
一郎「えー、別にいいよ」
啓太「……」カチャッ
一郎「梅干しじゃねーか!しかもでっか!魚ですらないよ!」
啓太「よく見ろ、一郎」
一郎「え?」
啓太「金箔がのってるぞ」
一郎「本当だ!でも感動薄っ!」
たける「その梅干しはな、紀州産で旨いんだ」
一郎「何気に寿司事情に精通してるたけるが怖い」
啓太「寿司事情じゃなくて今のは梅干し事情だろ」
たける「俺もそう思うんだけど」
一郎「あ……うん」
後輩「あやややや」
啓太「どうした?ピットみたいな声出して」
後輩「お茶こぼしちゃった」
一郎「馬鹿だな。ハンカチ持ってる?」
後輩「はい。すみません」ふきふき
一郎「ふ――……何というか、ネタが尽きたな」
たける「それはどっちの意味のネタだ?」
一郎「え?あ、そうか、寿司屋だからまぎらわしっ
あっちな、魚じゃない方のネタ」
啓太「いつもこうなるよな。どう終わらせていいのかわかんないっていう」
後輩「もう…終わりでいいんじゃないすか…」
一郎「こんな中途半端な形で終わるのもなあ」
たける「一郎、じゃあ、こうしよう。俺がレジに行って風船をもらうところまで書いたら終わり」
後輩「それオチつかないじゃないすか!」
啓太「じゃあ、風船の中身は結局ヘリウムガスじゃなくて空気だったってオチはどうだ?」
一郎「オチ微妙!しかもここで言っちゃダメだし!」
後輩「もうダメだ…みんなで一郎先輩の顔面にブローをくらわせるオチしか浮かばない…」
一郎「何その鬼のようなオチ!」
啓太「つかもうそれで良くね?」
一郎「良くない!ダメ!ゼッタイ!」
後輩「じゃあ…みんなで、いっせいのーせでやりましょうか」
一郎「何 着々と進めてんの!」
啓太「みんな、一郎を囲むんだ」
一郎「やめろよ!たける、何か言って、コイツらに!」
たける「…」
啓太「たけるは心の汚い人間には反応しません」
一郎「ええ〜〜〜っ」
後輩「はい、いっせいのーせっ」
一郎「ぶべらっっっっ」
END